「肉体死すとも脳は死なず」なんて時代が来るのでしょうか(出典:写真AC)

■人間の記憶をイメージとして残せたら…

事故の記録を残す装置として、航空機にはフライトレコーダーやボイスレコーダーがあり、街中ではドライブレコーダーを搭載する車も多く見かけるようになりました。筆者などは、飛行機のフライトレコーダーにもドライブレコーダーのようなビデオ機能を付ければ良いのにと思うことがあります。しかし少し考えてみると、航空機はとても大きいので、街中の防犯カメラのように機体内外のあちこちに設置していないと、どの箇所でどんな不具合が発生したかは追跡できない。自動車のドライブレコーダーのような前方のコックピットからの映像だけでは、せいぜいクラッシュした場面しか映らないから、事故原因の究明にはつながりません。

とは言え、画像の記録から得られる情報量は(その解像度にもよりますが)文字や音声だけの場合よりも何十倍も多いことも確かです。SFチックに飛躍して想像してみるに、人間の脳そのものから記憶のイメージを取り出してコード化し、ドライブレコーダーや防犯カメラのように映像として再生することができたら、突発的な事故の原因究明や事件の犯人の検挙率がどれほど向上するだろうと、思ってしまうのです。そして筆者と同じように映画監督や脚本家が考えたかどうかは知りませんが、2011年に公開されたハリウッド映画「ミッション:8ミニッツ」は、まさにそうした興味深いテーマを体感させてくれる映画でした。

ストーリーはこうです。列車爆破テロで亡くなった犠牲者の脳から最期の8分間の記憶を取り出し、電子的にソースコードとして保存する。そして科学者と犯罪捜査チームが、その記憶データをジェイク・ギレンホール演じる主人公の陸軍大尉の脳内にアップロードし、犠牲者の8分間の記憶イメージを再生しながら、大尉に列車爆破テロの犯人を突き止めさせようとする…このような内容です。映画では、「量子物理学」の技術を用いて犠牲者の脳の記憶を取り出し、大尉の脳内で再生するという設定になっていましたが、これを「AI」のテクノロジーと読み替えてもなんら遜色はありません。