2018/11/22
AIブームとリスクのあれこれ
■AIが生む偏見や差別
AIを使ったディープフェイクビデオ(「第4回:証拠映像ですら「証拠」と見なされなくなる時代」を参照)が、個人だけでなく国家にも脅威を与える可能性があることを以前この連載で書きましたが、AIを使えばSNSでも何やらインパクトのあることができてしまうようです。
マイクロソフトが考案したAIプログラムがその好例です。このプログラム(ボットと呼ばれている)にツイッターのアカウントを与えたところ、ヒトラーや白人至上主義の支持者による不快な投稿を学習するのに1日もかからなかったというのです。もっとも寛容な目で見れば、AIならこんなこともできてしまうんだ…とちょっとしたエピソードで終わってしまう話ではありますが。
しかし研究者や開発者たちから見れば、AIが偏見を持つようにふるまうことがわかった以上、これは看過できない問題でしょう。とりわけ顔認証や言語理解などを目的としたAI技術のクオリティに大きく関わることでもあるからです。黒人や東洋人よりも白人の顔の方をより好ましいと判断したり、日本語よりも英語を話す市民の方がサービスを受けやすくなるといったこと。考えればきりがありませんが、とても不快なことではあります。
AIを、偏見を持たない客観的で理性的な存在にするにはどうすればよいのでしょうか。専門家は、それは特定の人種や性別やセクシュアリティを支持するバイアスをなくすことだと指摘します。大手IT企業の中には、AIによる差別や偏見を取り除く研究をしているところもあります。AIベースの顔認証システムにおける肌その他の顔の属性をできる限りたくさん集めたデータセットを実装してバイアス(偏見)を低減するのだそうですが、果たしてどこまで可能になるのでしょうか。
AIブームとリスクのあれこれの他の記事
おすすめ記事
-
ランサムウェアの脅威、地域新聞を直撃
地域新聞「長野日報」を発行する長野日報社(長野県諏訪市、村上智仙代表取締役社長)は、2023年12月にランサムウェアに感染した。ウイルスは紙面作成システム用のサーバーとそのネットワークに含まれるパソコンに拡大。当初より「金銭的な取引」には応じず、全面的な復旧まで2カ月を要した。ページを半減するなど特別体制でなんとか新聞の発行は維持できたが、被害額は数千万に上った。
2025/07/10
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/08
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/07/05
-
-
-
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方