トランプ大統領の反動から次期大統領は脱炭素指向のシナリオで考える(Adobe Stock)

トランプ退任後のシナリオ

世界のエネルギー情勢を巡る不確実性は増加の一途をたどっている。エネルギー価格の高騰は各地の紛争や中東情勢、円安などが要因とされるが、背景には化石燃料の段階的な需要減少による混乱があるだろう。

とは言え、今後は生成AIやDX用のデータセンターや半導体工場の新増設、そして夏の熱波を生き延びるためのエアコンの普及と稼働率の高まりから、電力需要が大幅に増加することは避けられない。

先月発足したアメリカの第二次トランプ政権は、気候変動とこれを巡る社会・経済の動きにどのような影響を与えるだろうか。トランプ大統領は、大統領令によってパリ協定からの離脱、化石燃料の増産、風力発電設備の新設禁止、EV義務化の廃止など、あらゆるアンチ脱炭素政策を飛ぶ鳥を落とす勢いで進めている。

この状況は、カーボンニュートラルを手枷足かせと考えるアメリカ(トランプ支持層)とその友好国、ビジネス界にとって、当面は追い風となる。日本もまた、この勢いに乗じてエネルギーの安定供給を図るべく、さらなる化石燃料の輸入(LNGなど)を増強していくに違いない。

しかしこうした化石燃料回帰の動きは、トランプ氏の任期期間中だけであると私は考える。気象災害の激化にともない、梯子を外された再エネ業界や環境保護団体からの激しい抗議、全米各地では気候訴訟が相次いでトランプ政治の矛盾が露呈する。2030年には、アンチ脱炭素政策を180度転換した新政権が誕生する。

こうした想定のもとに、エネルギー業界における2030年のシナリオ(物理的リスクと移行リスク)を考えてみたい。