倉庫作業は一層過酷な環境になる(Adobe Stock)

2030年最悪シナリオで今回は運輸業に注目する。物流の主役である運送では労働環境が悪化し健康リスクが高まる。温暖化はダイレクトに命に関わる問題になっているだろう。

過酷な労働環境

地球温暖化で運輸業界が最も注意しなくてはならないのが、従業員への身体的ダメージだ。ドライバーや配送員は外気温40℃を超える炎天下で長時間の渋滞にはまれば、たとえカーエアコンを使っていても運転席に座っているだけで体力を消耗する。集中力や判断力の低下はもとより、体調不良や脱水症状を訴えるドライバーも増えるだろう。

さらに、配送を人手に頼るラストワンマイル(最終顧客との接点にあたる活動範囲)においては、猛烈な暑さの中を、重い荷物を抱えながら個々の住宅やオフィスを頻繁に行き来しなくてはならない。このような状況下では多くのドライバーが体を壊して欠勤したり、高温環境での配送業務を敬遠して辞める人も増え、配送員不足に一層拍車がかかるようになる。

同様に倉庫での仕分け担当者の環境も過酷になる。物流倉庫内の温度が上昇し、身体的な負担は高まる。

増加する台風や大雨、高潮といった気象災害による道路の冠水や塩害、土砂災害は業務の一時的な停止や頻繁なルート変更でドライバーらの負担を増やすだけではなく、浸水や土砂に巻き込まれるリスクも高くなる。