一斉帰宅抑制を想定した、本社棟での滞在訓練

危機管理塾 10月30日

サッポロビール経営企画部 入澤英雄氏

危機管理塾を10月30日にリアル開催

実際に泊まってわかる帰宅抑制時の課題

危機管理塾は10月30日、東京・千代田区の朝日ビル会議室で開催した。「一斉帰宅抑制を想定した、本社棟での滞在訓練」をテーマに、サッポロビール経営企画部の入澤英雄氏が今年6月に実施した滞在訓練の様子を紹介。そこで浮上した課題、改善点などを発表した。

同社は大規模地震を想定した各種訓練を行っているが、入澤氏によると、机上で終わらせず手や足を動かして確かめることがコンセプト。トランシーバーで話してみる、消火器を使ってみるなど「声を出したり体を動かしたりして初めてわかることがある」とした。

昨年10月には関東大震災100年を機に、東京・恵比寿の本社から墨田区の吾妻橋までの20キロを、震災遺構をめぐりながら徒歩で移動する訓練を実施。坂が多く橋が多い東京の地理や、普段の靴で長距離を歩く際の身体的負荷を体感し「逆に帰宅することがいかに大変かを啓発する機会になった」と述べた。

今年6月の滞在訓練は恵比寿の本社棟で行い、グループ会社の社員を含め15人(うち女性3人、役員2人)が参加。東京都が制作した帰宅抑制の動画などを見て座学を行った後、17時30 分に自衛消防隊が滞在の判断を運営本部に報告、その後、名簿の作成、立入禁止区域の設定、運営本部会議、非常用トイレの設置、水・食料の配布などを行い、22時に就寝した。

入澤氏は、一番のポイントは非常用トイレと指摘。「運用マニュアルをA3 判1枚の紙に落とし込み、便座の前に貼った。手順をしっかりわかるようにしておかないと、やり方を間違えて大変なことになる」とした。

排泄物の仮置き場も、従来は3階のテラスにまとめて保管する想定だったが、社員から『男女同じ導線でよいのか』との疑問が示されたため、場所を地下と1階に変更。ただ、これに対しても「誰が1階まで降ろすのか」「雨がかりでよいのか」「目隠しはなくてよいのか」などの声が出たという。「そうした細かい配慮が大事になることをあらためて知った」と話した。

自社の取り組みを発表する入澤氏

また、今後の改善策として、オペレーションを円滑化するため「ファーストミッションボックス」の導入を予定していると説明。初動時に必要な行動を簡潔に記載したカードをボックスに入れておき、最初に駆け付けた人たちがカードの指示どおりに動く仕組みで、避難所のオペレーションなどに利用されている。

入澤氏は「とはいえ、簡単にできる行動をひと目でわかるように記載するのは難しい」と発言。同社においては滞在運営本部、フロア隊、物資班、情報班など「役割別にタイムスケジュールを切り取ってカードに記している」と話した。ほか、社員の帰宅に対する考え方や、同社が用意している「帰宅届」「帰宅確認書」なども紹介した。

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