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カーボンフットプリント(CFP : Carbon Footprint of Products)誕生の背景としては、京都議定書に基づき2012年までに国内のCO2排出量を1990年比で6%削減するための手段として設定されたことがあげられます。この目標達成のために、あらゆる商品・サービスのCO2排出量をCFPで「見える化」して、事業者や消費者に気づいてもらい、CO2排出削減を促進してきました。このようにCFPは、政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」実現の役割を担うなど、主たる目的や役割が多様化しながらも、その成果に期待が高まっています。国内外のCFPの動向を解説いたします。

(1)国内のカーボンフットプリント(CFP)の動向

①カーボンフットプリントの意味と概念
カーボンフットプリント(CFP)とは、カーボンラベリング(CL:Carbon Labelling)とも呼ばれ、直訳すると「製品の炭素の足跡」です。すなわち、商品の一生(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)に排出されるCO2量を商品に表示して「見える化」(数値化または宣言)するしくみです。

製品のライフサイクル(製品の一生)には、製造する事業者だけでなく、原材料の調達、生産、流通、販売、使用、廃棄、リサイクルの段階において、それぞれの事業者や消費者が関わっています。そこで、CFPは、製品をテーマに、事業者と消費者が、共にCO2の排出削減を考え、取り組んで行くためのツールとして位置づけられ、究極的には、地球温暖化の原因であるCO2を減少させる手段として設定されました。

CFPの特徴は、①ライフサイクル・アセスメント(ISO:International Standardization Organization)国際規格ISO14040とISO14044手法を用いて算出すること、②タイプⅢ 環境ラベル(ISO14025)手法の2つを用いたコミュニケーション・ツールであること、の2つあります。

一般に、ライフサイクル・アセスメントは、あらゆる種類の環境負荷を対象としますが、CFPは、1製品当たりの温室効果ガスを対象としており、CFPの表示は、環境ラベリング制度の1つです。

このように、CFPは、事業者に対しては、サプライチェーン全体の排出量を「見える化」することで、削減効果率の高いポイントを把握し、企業単位を超えた一体的な削減対策で全体の最適化を実現できること、自社の環境負荷低減に対する取り組みを消費者にアピールできることに意義があります。また、消費者に対しては、自らの「CO2排出量を自覚」させて、環境負荷低減に向けた適切な消費行動のシグナルにするという意義があります。

② カーボンフットプリントのメリットとデメリット
CFPのメリットとデメリットを(A)事業者側におけるメリット、(B)消費者側におけるメリット、(C)事業者側におけるデメリット・課題に分けて示しますと、次のとおりです。

(A) 事業者側におけるメリット

ⓐ自社製品が環境に与える影響を、広い視野でより具体的に見える。
ⓑCO2削減ポイントに対して、重点的に削減努力とコスト削減の動機づけができる。
ⓒどうしても削減できない分については、オフセット(相殺)できる。
ⓓ環境規制の対応ができ、企業の社会的責任の行使を開示できる。
ⓔ自部門以外の環境負荷や環境負荷低減に関する意識や倫理観の向上につながる。
ⓕ企業イメージ(ブランド)の向上とCFP製品の市場競争力のアップになる。
ⓖサプライチェーンの人々と、環境に関し継続的に話し合うネットワークができる。
ⓗ自社内の環境に関する意識を高め、潜在的リスクやチャンスが把握できる。
ⓘCFP認定証書の交付で、環境報告書、製品カタログ、営業ツールとして活用ができる。
ⓙISO/TS (International Standardization Organization/ Technical Specifications; 国際規格標準仕様書 )14067の発行(2013年5月)により、国際規格に準拠した算定CFPコミュニケーションのアピールができる。
ⓚ政府施策関連の取り扱いメリットがあること。例えば、次の㋑、㋺、㋩などがある。
 ㋑プラスチック製容器包装再商品化製品の高度な利用の評価において、「加点評価」(高度な利用重量が10%増)が受けられる。
 ㋺CFPを活用したカーボン・オフセット製品試行事業ができる。
 ㋩グリーン購入法(環境物品調達の推進に関する基本方針)で取り扱いが明示できる。
ⓛ温室効果ガスGHG (Greenhouse Gas)プロトコル(スコープ3)とCFPとの適合性が確保できる。
ⓜアメリカEPEAT(Electronic Products Environmental Assessment Tools)などグリーン購入制度への適合性が、確保できる。


(B)消費者側におけるメリット

ⓐ製品を利用し、捨てる段階での環境への影響を意識できる。
ⓑエコなライフスタイルへチェンジできる。
ⓒ環境という新たな指標をもとに製品選択ができる。

 
(C)事業者側におけるデメリット・課題

ⓐCFP-PCR(PCR:Product Category Rule)が複雑で、人員確保と算定が困難である。
ⓑ登録・公開料が高く、検証に時間と検証費用がかかる。
ⓒ認定製品が3年ごとの更新となるため、その都度発生する費用と数値算定にかかる事務処理負担が大きい。
ⓓCFPの認知度が低い。
ⓔ国の補助金がない。