第13回 クレジット償却の方法とどんぐり事業事務局への申請方法
J-クレジット・プロバイダーの特徴まで解説
島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
2024/12/12
環境リスクマネジメントに求められる知識
島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
カーボンフットプリント(CFP)オフセット制度は、CFP (Carbon Footprint of Products)を算定した事業者が、別途取得した同量のクレジットによりカーボン・オフセットを行ったことを事務局が認証し、製品等に認証マーク「どんぐりん」を使用する事業を実施することであります。この手続きの手順のなかで、クレジット償却(無効化)があります。すなわち、「無効化」とは、登録簿などの各クレジット制度が運営するシステム上で、当該クレジットを無効化口座に移転し、それ以降移転できない状態にすることであります。第11回と第12回に引き続き、クレジット償却(無効化)の方法とどんぐり事業事務局への申請方法について解説いたします。
前の第12回において、図表1「CFPオフセット制度のしくみ」で示した、手続き③の「クレジット償却または無効化(以下、「無効化等」という)」の方法には、次のような、①直接的な方法と②間接的な方法があります。
① 直接的な方法―申請者自身が、各種制度における登録簿に口座を開設し、購入したクレジットを登録簿上で無効化口座に振り替える方法
② 間接的な方法―申請者自身は、登録簿に口座を開設せず、オフセットプロバイダーなどの仲介業者に、クレジットの購入と無効化等を委託する方法
クレジットの取得と無効化等のしくみを示しますと、図表1のとおりです。
図表1にみるとおり、①直接的方法は、企業等がクレジットを直接購入して無効化を行うのに対し、②間接的方法は、オフセットプロバイダー等による仲介業者が、クレジットを取得して無効化を行い、企業等が、オフセット証明を受け取る方法です。
ここにいう無効化とは、登録簿等の各クレジット制度が運営するシステム上で、当該クレジットを無効化口座に移転し、それ以降移転できない状態にすることを意味しています。
また、環境省の指針によれば、オフセットプロバイダーとは、「市民、企業等がカーボン・を実施する際に必要なクレジットの提供およびカーボン・オフセットの取り組みを支援または取り組みの一部を実施するサービスを行う事業者」のことです。
オフセットプロバイダーは、2018年度に「J-クレジット・プロバイダー」に移行しています。2024年3月時点において、プログラムに参加している会社は、8社であります。J-クレジット・プロバイダーの会社名と主な特色を示しますと、図表2のとおりです。
図表2 J-クレジット・プロバイダーの会社名と主な特色
会社名 |
主な特色 |
ブルードットグリーン |
旧マイクライメントジャパンであります。国内・海外に独自のネットワークを構築し、日本を含めた世界各国のクレジット・証書を提供しています。欧米の先進的な事例を活用し、地球温暖化防止に加え、SDGsなど社会貢献の切口も取り組み、特にRE100やCDP、SBTへの効果的な対応に向けて支援などを行い、戦略立案からクレジット調達、無効化まで一貫して支援しています。 |
イトーキ |
全国の販売網を通じてカーボンオフセットサービスを展開しています。オフセットの企画や算定、効果的なPRなどトータルサポートを実施しています。各拠点と連携し全国のお客にオフセット支援を行っています。排出権は案件に適した銘柄を選定し、排出係数の調整、ASSET事業の相談と創出事業者の紹介を実施しています。 |
ウェイストボックス |
CO2排出量調査を専門とします。ソフト支援事業として企業や自治体のクレジット化の支援を行っています。またCDPの気候変動コンサルティングとSBT支援パートナーでもあります。自主的なカーボン・オフセット、カーボンニュートラルの支援を行っています。最近は、GHGプロトコルに基づくスコープ3排出量の把握、SBT設定、CDP質問書への解答とクレジットとの関連性などの相談に応じています。 |
more trees |
「もっと木を」というコンセプトのもと音楽家坂本龍一のよびかけで設立された森林保全団体であります。協定を結んだ地域の森林吸収由来のクレジットを扱います。いつ・どこで・どうやって生まれたかがわかる、顔の見えるカーボン・オフセットを重視します。全国各地で展開している「more treesの森」が吸収したクレジットに特化しています。 |
カーボンフリー コンサルティング |
国内外の環境に関する課題解決を行うコンサルティング企業で、国連、中国、東南アジア、国内の都道府県や市町村区、業界大手企業との取引実績があり、年間約300件を取り扱います。多様なニーズに合った各制度利用のクレジット活用の提案をし、経済産業省や環境省の事業受託は、5年以上継続し官公庁の事業に精通しています。 |
クレアトゥラ |
大規模クレジットの一括購入や中長期的な収益化の支援を得意としています。10万t規模の大型ニーズにも対応できる国内有数の供給体制を整えています。エネルギー証書としての再エネ由来J-クレジットや森林・農業などのネイチャーベースのJ-クレジット、海外旅行ボランタリークレジットなど様々なニーズに応えています。カーボンフリー商品の開発支援やISOに準拠したカーボンフットプリントの算定を支援しています。 |
バイウィル |
クレジット創出から販売までトータルにサポートしています。脱炭素経営・カーボンニュートラル化に向けた戦略立案のコンサルティングや実際の削減目標を実現するための実行支援サービスを提供しています。オフセット領域では、J-クレジットにとどまらず、海外のグリーン電力証書やカーボンクレジットについてもニーズに合わせて調達します。中長期支店での脱炭素化に向けて海外を含めて再エネ導入などの支援をしています。 |
Permanent Planet |
追加性のある再生可能エネルギー設備の導入や生物多様性に配慮した森林保全活動など、より本質的なクレジット活用スキームの構築や需要家との取引仲介迄幅広い支援を展開しています。イベントの環境活動など1t-CO2単位のクレジット需要から、GXリーグ、CDP、SBTなど国内外の脱炭素制度・イニシアティブに準拠したクレジット無効化手続きまで、多様な要望に柔軟に対応しています。 |
環境リスクマネジメントに求められる知識の他の記事
おすすめ記事
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方