産業革命以降、石油は文明の基盤となってきた(イメージ:写真AC)

■石油を使わない世界なんて考えられない

私たち人間は、身体を動かし、脳を使うために日々エネルギーを摂取しなければならない。炭水化物はその代表的なものの一つで、西洋では小麦からパンをつくり、東洋では米を主食として活動し、文明を発展させてきた。

一方、生物の生育や活動に欠かせない炭水化物と同じように、経済を動かすにもエネルギーを必要とする。その代表的なものは石炭・石油・天然ガスだが、ここではエネルギー需要だけではない「石油」の汎用的な利便性と脱炭素に向けたジレンマに焦点をあてて考えてみたい。

現代社会において、石油はすき間なく生活の中に組み込まれている(イメージ:写真AC)

「石油」は電気エネルギーや内燃機関の駆動力、化学繊維やプラスチックをはじめ、ありとあらゆる形に変換されて、毛細血管のようにすき間なく生活の中に組み込まれているといっても過言ではない。1859年に米ペンシルバニア州でドレークという人が油井機械掘りを行い、初めて1日30バレルの出油に成功して以来、消費者である私たちは石油の多大な恩恵を受け、その利便性を享受し続けてきた。

「今となっては石油を文明の基盤としない世界など考えられない。脱炭素社会への移行は歓迎するが、石油だけは手放すわけにはいかない。そんなことをしたら、経済は混乱し、モノの値段は高騰し、これまでの生活そのものが成り立たなくなる…」。と、ここまで具体的に考えなくても、多くの国民は車のガソリンはもとより、石油由来のすべての製品・商品がなくなることへの漠たる不安を抱えているに違いない。