宇佐美社長はデータセンターの分散がリスク対策強化につながるとしている

ICTの進展により、年々重要性が増し続けるデータセンター。集中する企業の所在同様、63%は首都圏に置かれている。株式会社データドックの宇佐美浩一社長はBCP(事業継続計画)の面からも現状を疑問視。災害対策と省エネの観点から新潟県長岡市でデータセンター事業を展開する。

「AI(人工知能)やブロックチェーンの進展などでデータセンターの需要は増している。さらにはセキュリティや省エネ性能など顧客の要望が上がっている」と宇佐美社長は現状を分析。一方で富士キメラ総研の調べによると、国内データセンターの51%が耐荷重性の低い築20年以上。さらに65%はラックの消費電力が2kVA以下で多くのデータを扱いづらい。さらには首都圏に6割近くが集中していることもあり、「データセンターは課題が多いと感じ参入しようと考えた」と宇佐美社長は振り返る。そして2016年に親会社でネット広告事業を手がけるメディックスの新規事業として会社を設立した。

「首都圏と西日本は首都直下地震と南海トラフ地震の懸念がある。自家発電にせよ燃料が必要で、道路が寸断の恐れがある所を避けたかったのと、リスク軽減のためにもデータセンターの地方分散が必要だと感じていた」と最初からデータセンターの設置先として首都圏を外した宇佐美社長。海外については「コストを下げることはできるが、日本と法制度が違いデータ差し押さえといったリスクがある」として避けた。

雪を活用した冷房のイメージ図。これで電気代を大幅に削減する(提供:データドック)

そして決めた設立先は長岡市。理由としては新潟県が首都圏で事業継続セミナーを実施するなど当時の知事が誘致に熱心だったこと、首都直下地震や南海トラフ地震の影響を避けられること、上越新幹線や関越自動車道など首都圏との交通網が充実していること、さらには積雪が多く、冬の雪を保存・活用し不凍液を通じた熱交換方式で夏に冷房を行える。これにより首都圏のデータセンターと比較し38%のコスト削減につながるという。

新潟県というと2004年の新潟県中越地震や2007年の新潟県中越沖地震といった、地震が多いイメージを持たれがちだが、宇佐美社長は「データセンターのある場所は地盤が強固。活断層からも外れ液状化の心配もない」と評価。今年1月に稼働した延床面積約5400m2のデータセンターは免震構造2階建て。ハザードマップも参考に2.5mの防水壁や建物内に72時間稼働するガスタービン発電も設置した。災害対策以外にも監視カメラや管理センターのほか、入場への2要素認証といった防犯やDDos攻撃対策などサイバーセキュリティ対策も取っている。

ラックあたりの電力は30kVA、床耐荷重はm2あたり3t。東京とはメインとバックアップ回線をいずれも100Gbpsで、大阪とは10Gbps回線でつなぐ。日本データセンター協会のファシリティスタンダードの最高ランクのティア4を獲得している。電気代などコストの削減から、宇佐美社長は「首都圏のデータセンターと比較し、競争力のある価格設定としている」と説明。更なる顧客獲得を目指しているほか、2020年度には2期として現在の3倍の延床面積のデータセンター開設の予定となっている。災害リスクとコスト低減で、地方から大都市の事業継続を支えていく。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介