ねこじゃらしの川村氏は災害対策としてのクラウドの有効性も説明。

企業で導入が広がるクラウド。利便性の向上やサイバーセキュリティのほか、近年は災害時に有効なバックアップとしても注目をされている。国内約1500社のデータをバックアップする、ねこじゃらし代表取締役・川村ミサキ氏に話を聞いた。

ねこじゃらしは2006年に設立。当初はファイル共有サービスを提供してきた。かつて受託を受けた作成中のホームページのデータをアルバイトが誤って消去してしまった。結果的に問題はなかったが、川村氏はバックアップの重要性を感じ、クラウドにいち早く着目。2009年にクラウドによるバックアップサービス「BackStore(バックストア)」の提供を開始した。

同サービスは元々海外ベンチャーのソフトを導入したもの。海外の企業や政府での導入実績があるほか、会社の全パソコンの状況を知られるような1人でも運用できるよう管理の簡素化がなされている。電話やメールによる専任サポートも用意し、対応する。

写真を拡大 サービスのイメージ(提供:ねこじゃらし)

端末の誤操作による消去や上書きのほか、ランサムウェアなどサイバー攻撃で端末が使用不能になってもデータを保存。2011年の東日本大震災以降は災害時に有効なバックアップとしてクラウドが注目。川村氏は「サービスを開始した当初は災害のことはあまり考えていなかったが、震災後は月に100社ペースで契約が増えたこともある」と振り返る。実際に震災でサーバーが被害を受けた宮城県の団体が導入したケースもあった。

「BackStore」では企業規模や保護をする対象によって3種類のサービスから選べるようになっている。パソコンやスマートフォンなど端末データバックアップの「inSync(インシンク)」、サーバーバックアップの「Phoenix(フェニックス)」、さらには中小企業向けに「CrashPlan(クラッシュプラン)」を用意している。基本的に自動でバックアップされ、時間や手間もかからず作業を忘れる心配がない。

写真を拡大 クラウドサービスのコース一覧(提供:ねこじゃらし)

「CrashPlan」はパソコンとサーバーを対象としており、東京と沖縄のデータセンターで管理。1アカウント4台まで使用可。10GBの場合月2900円で利用できる。「inSync」は25ユーザーからで1ユーザーあたり月1000円~、「Phenix」は台数無制限で保存容量1TBで月5万2000円。「inSync」と「Phenix」は主にAWSに保存。データの重複がないよう、負荷を下げ効率的にバックアップする。最近では広告制作会社のADKアーツが「inSync」を導入。映像など膨大なデータをアップロード作業やデータの重複がなくバックアップができ、時間と手間を削減できたという。

「災害やランサムウェアなど、企業リスクは多様化している」と川村氏。2009年のサービス開始以降、外部にデータ流出したことはなく、「高機能でコストパフォーマンスのいい当社のサービスを検討してほしい」としている。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介