能登半島地震が障がい者の通う通所施設へどのような影響を与えたか(イメージ:写真AC)

障がい者通所施設の意義と事業状況

4月16日、NHKハートネットTVで『能登半島地震と障害者②地域福祉の復興に向けて』に出演した。その内容を紹介しながら、特に障がい者の通う通所施設の現状と課題について考える。

最初に輪島市の通所事業所が、事業継続の危機に直面している状況が放送された。地震後、1カ月で再開したものの、通常14名の利用者がわずか6名に減少、職員も疲弊していた。

被災地に残った利用者にとっては、事業所が1カ月で事業を再開したのはとてもありがたいこと。通所事業所は、障がい者にとって福祉的就労により工賃を得て生活を向上できる場だ。障がいのある人が仲間とともに共同作業などを行って孤立を防ぎ、社会の一員として尊厳をもって生きるために必要な場所である。能登半島地震での被災という過酷な状況で、このような場があるのはなんと尊いことだろう。

公園の清掃やお弁当づくり、ペットボトルのラベルはがしなど、高い賃金は払えないけれども必要な仕事は数多くある(イメージ:写真AC)

一方で、NHKのアンケート調査によれば、福祉事業の収入が減少した被災事業所は87%、そのうち半分以下になってしまったところが6割に及んだ。クラウンドファンディングにも取り組みながら、なんとか事業を続けたいとがんばっている。

これは、能登半島地震での広域避難がもたらした現象だ。平時であれば、通っている利用者数に応じて収入が入る。そこで事業所が創意工夫しながら利用者増を図ったり、工賃の出る作業を開発したりする自助努力によってレベルアップを図る。

ところが、災害時には避難によって利用者が減少する。これは自助努力の範囲を超え、そのしわ寄せを一方的に事業者に押し付けるのは無理がある。通所事業は社会になくてはならない福祉サービスなのだから、災害時に支える仕組みが必要だ。

福祉事業の収入が減少した被災事業所は87%に及んでいる(イメージ:写真AC)

一度事業所がなくなってしまえば、避難している障がい者と家族は戻ってこられない。そうなると、障がいを抱えながら新しい地域で、生活を再建しなくてはならない。また、被災地に残っている障がい者も途方にくれてしまう。あまりにも過酷ではないだろうか。やはり、特に障がい者にとっては、住み慣れた地域で生活再建できるように手を尽くすことが大切だ。