2013/10/25
防災・危機管理ニュース
事業競争力強化モデル事業の中間報告会を開催
経済産業省は、グループ単位による事業競争力強化モデル事業(名称「事業継続等の新たなマネジメントシステム規格とその活用等による事業競争力強化モデル事業」)として、BCPを運用するための事業継続マネジメントシステム(BCMSーISO22301)を、単に災害に備えるだけでなく、企業経営の差別化として成長に結びつける試みを進めている。一部のグループはエネルギーマネジメントシステム規格であるISO50001に基づいたエネルギー効率化等にも取り組む。同事業の中間成果報告会が10月16日~24日にかけ、名古屋、大阪、東京の3会場で開催された。
報告会では、同事業に参加する28グループが発表。このうち24日に東京で開催された報告会では、リコーやイオン、東京海上日動リスクコンサルティング、清水建設らが、それぞれの取り組みとこれまでの成果などについて報告した。
リコーは、東日本大震災で一部サプライヤーからの部品供給が止まり完全な生産復旧までにかなりの時間を費やした経験から、サプライチェーン全体としてのBCMS構築を目指しサプライヤーも含めたISO22301の認証取得に取り組む。同社がサプライヤーに行ったアンケートでは4割がBCP策定を完了しているという。リコー自身の被災の経験や対応などを独自のセミナーなどで伝えることでサプライヤーに理解を求めていく方針。来年1月末頃までには説明を完了する予定だ。当日発表した同社内部統制室TRM推進グループの荻原毅氏は、サプライヤーの目標復旧時間(RTO)を共有することが特に大切だとし、互いのBCPを生かすためにWIN-WINのBCPを構築することが課題だとも述べた。
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社ビジネスリスク事業部の坂本憲幸氏は、同社が企画・運営に関わる高知県主導の地元企業群の事業継続マネジメント強化事業について説明。地方の中小企業がBCMS構築に関し十分な知識や情報を得られていない状況を解決するために、高知県では「BCP策定推進プロジェクト」を進めている。同社では、このプロジェクトにISO22301の考え方を取り入れる支援をすることでさらに実効性の高いBCPを浸透させ、地元産業のブランド力強化、ひいては事業競争力強化に結び付ける考え。同県を中心に展開するスーパーマーケット「サニーマート」の取り組みを先駆的な企業として参考にすることで、BCMS構築のメリットの理解を求めていく。
清水建設は、中央区の京橋地区を「京橋モデル」と名付け開発を進めている。同地区は銀座に隣接する立地の良さに加え、本モデル事業を効率的に行うための地域熱供給事業が行われていることから、エネルギーの効率化を図るとともに、防災力が高いモデル地区とする。熱供給事業を行う東京都市サービスと、建物のリフォームやマンションの管理などを行うシミズ・ビルライフケアと協議会を設立し、地域との連携を図りながら、ISO22301やISO50001の認証取得に取り組むことで強靭かつ事業競争力も備えるエリアづくりを目指す。また帰宅困難者対策にも対応できるよう、災害時における72時間の熱・電力の安定供給や、1万人規模の帰宅困難者受け入れ態勢の構築も視野に入れる。同社ecoBCP事業推進室の橘雅哉氏は、同地区で得たノウハウを同社の展開する他の地区にも活用したい構想を語った。
当事業に参加するグループ事業の取り組みは、運営を手掛けるニュートン・コンサルティングのホームページ(http://www.newton-consulting.co.jp/meti/)で適時公開される。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/25
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方