今年の正月には羽田空港で日航機と海保機の接触し炎上する事故が起きた(イメージ:写真AC)

正月を襲ったもう一つの危機事態

元日を襲った能登半島大震災に続き、2日に羽田空港で悲惨な事故が起きた。日本航空機と海上保安庁の機体が滑走路で接触、炎上した事故である。海保機の乗員6人中5人が亡くなり、日航機側は14人がケガをした。不幸中の幸いは、日航機乗員乗客に死亡者がいなかったことだろう。

事故の原因に関して、憶測も含めたさまざまな情報が飛び交っていたが、真の原因は現時点では不明であり、運輸安全委員会の調査を待つことになる。ただ、憶測を除外して事実関係だけで整理しておくことも重要であり、その範ちゅうでも十分な考察は可能である。

いうならば、事故の直接的起因となる発生原因として『着陸許可が出ている滑走路に海保機が侵入した』事実は疑いようがない。それがなぜ起きたのか、何層にも掘り下げていくことで発生原因対策につながるのである。

さらに、ものつくりの世界の品質保証における流出原因にあたる原因としては『海保機の滑走路侵入に気付かなかった』ことだ。同様に、それがなぜ起きたのか掘り下げていくことで真因に辿り着き、効果的な対策につなげられる。

あえて「憶測を除外して」と表現したのは、上述したように発生原因と流出原因を分離して論理的に分析せず、感覚的に論ずる記事や報道、ワイドショーの類が余りに多いからだ。批判の意味も込め、そのように表現した。繰り返しになるが、もう一度記述する。

◆着陸許可が出ている滑走路に海保機が侵入した
◆海保機の滑走路侵入に気付かなかった

客観的事実だけからでも十分な考察はできる(イメージ:写真AC)

この二つは憶測の要素の入りようのない事実であり、明確に分けて論じる必要がある。断っておくが、筆者自身は航空管制や航空機事故防止の知識はまったくない。無知である。それでも、この事実は疑いようがなく、この事実から考察をすることはできる。疑問を感じることも可能だ。

最初の発生原因『着陸許可が出ている滑走路に海保機が侵入した』について、巷の風潮は「ヒューマンエラー」という言い方が多いように感じる。確かに、人が間違いを起こすのは当然のことだ。人は機械ではないので、体調面や感情面の変動による影響もあり、決まりを逸脱する間違った動作、操作はつきものである。

しかし、人は間違うという前提に立脚するのは当然であり、それを「ヒューマンエラー」と称してしまった時点で思考停止に陥り、真因追及ができなくなる危険性がある。