2024/02/25
防災・危機管理ニュース
東日本大震災から間もなく13年。岩手県内の被災地では防災・減災を強化するため、人工知能(AI)を導入したり、活用を模索したりする動きが広がっている。AI搭載の監視カメラを開発し、防災につなげようとする企業もある。
震災で死亡・行方不明が計1807人に上った陸前高田市。災害時に防災無線の音声が届かず、SNSも利用していない情報弱者への避難情報の伝達が課題となっている。
市は昨年11月、自動音声で住民に対し一斉に架電をする「オートコール」とAIを組み合わせ、避難状況を把握するシステムの本格運用を全国で初めて開始した。津波や大雨の際、事前に電話番号を登録した高齢者や要支援者らに避難情報を発信。「避難しますか」などと音声が流れ、住民が現在地やけがの有無を口頭で答えると、AIが文字に変換し、災害対策本部に情報を集約する仕組みだ。
災害時は電話回線が不通になる恐れもあるが、「支援が必要な人と迅速に連絡が取れる体制として広まれば」と、市防災課の中村吉雄課長(51)は期待を示す。
防災事業を手がけるIT企業「ヴィシュヌ」(盛岡市)は、潮位変化や避難指示が出ている場所に人が残っていないかなどの「異常」を検知する、AI搭載の監視カメラを開発中だ。津波の被害を受けた釜石市や地元土木会社と協定を結び、港湾や道路沿いにカメラを設置。現在は開発に向け、データを収集している。避難者の属性や人数を分析するAIカメラを開発して避難所に設置し、ニーズに合った支援物資を届けられるようにする構想も持つ。
釜石市では震災の際、水門を閉めに行き津波の犠牲になった人がいたり、市民の避難状況が把握しきれなかったりするなどした。市防災危機管理課の川崎浩二課長(54)は「防災対策の手段を増やしたい」と話し、AIの活用を模索する。
ヴィシュヌの千葉涼介最高経営責任者(31)も「情報を収集して連携できるのがAIの良いところ。(災害時に)欲しい情報を早く正確にリアルタイムで届けるために、引き続き研究開発していく」と意気込んでいる。
〔写真説明〕自動音声の質問に答える陸前高田市の職員。自動音声で住民に対し一斉に架電をする「オートコール」とAIを組み合わせ、避難状況を把握するシステム=2月14日、岩手県陸前高田市
〔写真説明〕自動音声で住民に対し一斉に架電をする「オートコール」とAIを組み合わせ、避難状況を把握するシステム。特定のキーワードが含まれている場合は目立つように表示される=2月14日、岩手県陸前高田市
〔写真説明〕平田漁港に設置された開発中のAI搭載の監視カメラ=22日、岩手県釜石市
〔写真説明〕開発中のAI搭載の監視カメラについて説明するヴィシュヌ最高経営責任者の千葉涼介さん=22日、岩手県釜石市
(ニュース提供元:時事通信社)
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