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地球環境と企業活動

地球環境が急速に劣化してゆく中で、環境保全は喫緊の社会課題となっている。今日では、企業が事業活動を通じて社会課題の解決に貢献してゆくことは社会の市民として当然の責任と考えられるようになってきた。このような背景から、社会課題のビジネス化への取り組みは、企業にとって新たな経営課題となっている。すなわち、新たなビジネス機会を創る持続的成長戦略の1つとして、また同時に、社会に関わるリスク(ソーシャルリスク)への適切な対応として、今後その重要性は高まってゆくものと考える。

地球環境問題への対応においては、社会活動と生態系との相互作用システム、すなわち社会生態系システム(Socio-Ecological System: SES)を強く意識した多面的かつ包括的な解決が必要になってくる。

社会生態系システムは、それを構成するサブシステムとして、社会システム、経済システム、環境システム、生態システムなどが存在し、いずれも絶えず変わり続ける複雑なシステムである。これまでの経済発展が今日の自然資本の劣化を招いたと考えられている中で、企業活動がこれら関連するシステムにどのような影響を及ぼしているのか、そして今後のビジネス展開の変革を通じてこれら諸問題にどのようなプラスの影響を与えてゆけるのか、が検討されなければならない。

つまりこの問題は、経済的視点を超えたより大きな視点で社会の発展と企業の経済的成長の両立をいかに図っていくかといった本質的な意味を持っている。例えば、経済発展のための産性向上のために化石燃料が大量に使用され、その結果、温暖化を惹起したと考えられている。その文脈からは、温暖化を抑止するために脱炭素対策が不可欠となり、企業として炭素に頼らない経済成長を目指してゆくといった既存の枠組みからの変革を意味している。

社会課題とソーシャルリスク

企業が社会課題への解決と事業活動を両立させようとすると、これまで経営が判断の拠り所としていた経済的要素だけではなく、社会的要素を経営に組み入れてゆくことが必要になる。必然的に、将来の企業価値の変動要素として、これまでの経済的要素だけでなく社会的要素を意識してゆくこととなる。社会に関わるリスク(ソーシャルリスク)の特徴を理解しなければならない。