2024/01/31
防災・危機管理ニュース
250人超の死者・安否不明者を出した能登半島地震について、石川県の防災会議・震災対策部会長を務める神戸大の室崎益輝名誉教授(防災計画学)が31日までに時事通信の取材に応じ、「予想をはるかに超えた地震だったが、初動に問題があった」と語った。
室崎氏は地震発生後、2回に分けて輪島市や珠洲市などを現地調査した。「被害の残酷さは阪神大震災以上だ。立派な邸宅や重要文化財の寺社が軒並み壊れ、輪島市では火災による被害も大きかった」と振り返る。
能登半島では多数の道路が寸断され、一時は4市町24地区で計3300人以上が孤立状態に。自衛隊や消防などによる救助、救援活動も阻まれ、「いち早く空から被害状況を把握し、国のトップに情報を与えないといけなかった」と指摘した。
県の地震被害想定は、25年以上前の調査を基に定められていた。2023年5月の防災会議では2年間で抜本的に見直す方針を確認していたが、地震の発生確率などを評価する国の「長期評価」の公表遅れもあり間に合わなかったという。
室崎氏は「長期評価に基づいて被害想定を出すのが慣行だった。結果待ちの姿勢が裏目に出た」とした上で、「集落にあらかじめ衛星携帯や1カ月分の食料を備蓄するなど、孤立する前提で計画を作るべきだった」と悔やんだ。
一方、津波の避難行動は徹底されていたと評価。輪島市の観光名所「朝市通り」で起きた大規模火災を例に挙げ、「救助と消火と避難のどちらを優先するかはケース・バイ・ケース。今回は逃げるのが正解で、心残りもあるだろうが割り切らないといけない」と話した。
「想定外の想定外」と繰り返し表現した室崎氏。「防災は常に裏切られる。だから初動対応が重要で、災害が起きた瞬間にどういう態勢をつくって指示を出し、誰に応援を求めるかを判断しないといけないが、それができなかった。今もボランティアなど支援の手は足りていない」と語った。
〔写真説明〕オンライン取材に応じる神戸大の室崎益輝名誉教授=1月30日
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方