2023/12/15
防災・危機管理ニュース
【台北時事】来年1月13日の台湾総統選が近づく中、中国の習近平政権は農水産品の禁輸措置で蔡英文政権を揺さぶっている。中国は近年、台湾に対する事実上の制裁措置として輸入停止を決定。しかし、中国に融和的な最大野党・国民党の支持者が多い地域で生産される果物については一部の輸入を解禁した。与党・民進党の地盤では業者から「国民党に投票するしかない」という声が出ており、習政権が実質的に国民党を支援する形となっている。
◇対話で「収入増」
中国政府は2021年以降、台湾の農水産品に対して相次ぎ輸入停止措置を実施した。表向きは、害虫や薬物が検出されたことなどを理由としている。しかし、従来行われていた当局間の協議にも応じておらず、「一つの中国」原則を認めない蔡政権に対する経済的威圧の一環とみられている。
主に東部・台東県で生産される果物のバンレイシは輸出の9割が中国向けだ。中国は21年にバンレイシを輸入禁止とした後、今年6月に禁輸措置の一部解除を発表した。台東県は国民党の地盤で、対中関係を重視している。県は中国側の意向を踏まえ、害虫対策として新たな包装設備などを導入。国民党所属の県幹部が訪中し交渉を重ねた。王志輝副県長は時事通信の取材に「積極的に中国側とやりとりし、解決策に取り組んだ」と説明した。
台東県の果樹園を12日に訪れると、バンレイシが拳ほどの大きさに実っていた。今月下旬には中国へ出荷される見込みだ。生産者団体の会長を務める呉村田さん(47)は「中国への輸出が再開されてみんな喜んでいる。収入増が期待できる」と笑みを浮かべた。
◇損失広がる民進党地盤
一方、民進党の地盤である南部の台南市などで有名な高級魚のハタやパイナップルについては禁輸解除のめどは立っていない。これらも輸出先の9割を中国が占めるため、経済的な損失が拡大している。
10年以上ハタを中国に輸出してきた郭南輝さん(70)の4ヘクタールの養殖場は14日、閑散としていた。禁輸により、2年で800万台湾ドル(約3600万円)の損失を出し、養殖を中止した。郭さんはストレスが原因で脳卒中になったといい、現在は半身不随。「蔡政権は一般人の生活を顧みない。前回の総統選は民進党を支持したが、今回は国民党候補に投票する」と断言した。
また、農業に詳しい台南市の元市議によると、地元のパイナップル農家も大打撃を受けている。元市議は「政府は農家の生存のために中国と話し合うべきだ」と主張した。
〔写真説明〕取材に応じる台湾東部・台東県の王志輝副県長=12日、同県
〔写真説明〕中国に出荷する果物バンレイシを手にする生産団体会長の呉村田さん=12日、台湾東部・台東県
〔写真説明〕ハタがいなくなった養殖場を案内する郭南輝さん=14日、台湾南部・台南市
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方