厚生労働省はすべての介護事業所などに今年度中のBCP策定、研修、訓練を義務付けている(イメージ:写真AC)

本年9月1日に設立した災害福祉フォーラムは、早速9月30日に第1回の研究会を実施した。テーマは介護施設のBCP。厚生労働省はすべての介護事業所、障害サービス事業所等に今年度中のBCP策定、研修、訓練を義務付けている。だが、実際には何をどうすればよいかわからないという声をよく聞く。

そこで、熱海市の特別養護老人ホーム「海光園」施設長で、法人理事長の長谷川みほ氏に研究会講師を務めていただいた。「海光園」は、内閣府「国土強靱化貢献団体の認証に関するガイドライン」を満たした「レジリエンス認証」に取り組み、過去3回更新されている。福祉施設では初めてで、熱の入った素晴らしい講演に加え、実際に施設内をめぐりつつ取り組み状況をご案内いただいた。

現在、災害福祉フォーラム会員限定で研究会の録画ビデオを視聴できる。会員申し込みは無料なので、関心のある方はぜひご登録きただきたい。
災害福祉フォーラム:https://saigaifukushi-forum.jp/join.html

今回は、講演のエッセンスを簡単に紹介する。

BCPへの取り組みと近年の災害

海光園は特別養護老人ホーム定員80名のほか、軽費老人ホーム15名、短期入所18名、通所介護25名の施設。災害時に通所介護は一時的に事業休止可能だが、他の事業は休止できない。

災害時に要支援者へのサービス業務をいかに継続させるか(イメージ:写真AC)

東日本大震災では、福祉事業者が大変に苦労した。これを「わが事」ととらえ、静岡県の「ふじのくに防災士」認定者を毎年1名養成することを目標としている。2015年に最初のBCPを策定した。2016年度にはガス式自家発電機の設置、貯水槽への蛇口取付けなど設備を強化。内閣官房国土強靭化室「民間の取組事例集」へ掲載され、最初のレジリエンス認証を取得した。

2021年の伊豆山土砂災害では、5日間警戒レベルが出続け、垂直避難をしながら乗り越えた。また、厚生労働省のDWAT(災害福祉支援チーム)のメンバーとして、避難所の要支援者を施設に移送する支援を行った。

同年は8月7日にも台風10号によって裏山で倒木があり、ぎりぎり敷地には入ってこなかったが、建物を直撃する危険に見舞われた。長谷川さんはこのことから「まさかは起こる」と実感したそうだ。だから、心と物資の準備は最低限しておくべき、と話された。