このほど公開されたD.Chem-Coreは、災害・事故等に伴い環境中に化学物質が突発的に排出された場合に必要となる情報が一元的に管理されていて、①緊急時に対策が必要な化学物質を特定する、②リスクの時間的・空間的及び質的な特徴を迅速に把握する、③実態解明のための手法を入手する、などに役立つ情報が入手できる。掲載している化学物質は、健康や環境に影響を与えるもの数千種類に及び、国内外のさまざまな化学物質やリスク管理のサイトとも連携している。例えば、排出した化学物質の毒性を調べたり、気象データとの連携により排出拠点の風向きや風力を把握することも可能だ。また、国土交通省が公開しているハザードマップポータルサイトと位置情報を共有して浸水リスクの高い地区内の取り扱い事業所を調べるといった活用方法もできる。

使い方は、事故の発生前から復旧段階に至るまでさまざまで、「状況別メニュー」の中から、「事前」「発生直後」「調査・検討」「事中の対策」「事後の対応」と、局面に応じて選ぶことができる。災害・事故等に伴い環境中に突発的に化学物質が排出されるような事象の場合は、状況が刻々と変化するため、利用者が知りたい情報を迅速に収集できるように整理している。また、ある工場が事故や自然災害で被災したような場合は、「目的別メニュー」の中から「地理情報」を選択し、地図上から当該事業所の場所を選べば、管理している化学物質やその毒性などを把握することが可能になる。

米国では、化学物質の事故対応を支援するシステムとして、緊急時応急措置指針(Emergency Response Guidebook、ERG)や「WISER」と呼ばれるシステムが整備されているが、国内で化学物質対応に必要な情報を一元管理できる仕組みがこれまでになかった。環境省では、今後、地方公共団体の担当職員向けに講習会等を行うことにより、当サイトの普及を図って行く予定。また、情報の蓄積やシステムの改良は継続的に実施し、掲載情報の充実を進めることで、より良い情報基盤にしていきたいとしている。なお、システムの運営は、今後も国立研究開発法人国立環境研究所が行っていくとしている。