2025/04/04
防災・危機管理ニュース
トランプ米大統領が、貿易相手国に同等の関税を課す相互関税を発表した。日本にも個別に24%の税率を設定、米国を市場とする輸出企業にとって大打撃となる。3日には自動車への25%の追加関税も発動。国内経済の停滞リスクが高まる中、政府は引き続き2国間交渉で適用除外を求める考えだが、手詰まり感は強い。
◇最悪シナリオ
「日本が除外されない形で発表されたことは極めて遺憾」。武藤容治経済産業相は同日記者会見を開き、これまでの要請が徒労に終わった悔しさをにじませた。「報復関税」による対抗措置も否定はしなかったものの、「冷静に判断していきたい」と、踏み込んだ発言はなかった。
相互関税の発動で、米国向けが多い建設用機械やブリなど幅広い品目に影響が及びそうだ。グローバルマーケットエコノミスト鈴木敏之氏の試算によると、自動車関税と合わせた日本の生産額の落ち込みは6兆円規模に上る。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、相互関税で日本の実質GDP(国内総生産)が0.59%、自動車関税を含め0.7%(約4兆円)押し下げられると試算。「予想された中で最悪シナリオに近い」と指摘する。
政府は関税の影響が深刻となる中小企業の資金繰りを支援するため、政府系金融機関の融資要件を緩和する。武藤氏は「サプライチェーン(供給網)対策を含め、(企業が)不安を感じないように説明していく」と語った。
◇揺さぶりも
相手国との「相互性」を重視するトランプ氏は、個別品目の関税率や非関税障壁を問題視。発表時にも日本に対し「(米国産の)コメに700%の高関税を課している」と持論を展開した。
ただ、食品に限れば、トウモロコシや大豆などを中心に米国の対日貿易額は黒字が続き、2024年の黒字額は約1兆6000億円。ある農林水産省幹部は「米国から相当買っているのに、それでも不公平と言うのか」と憤る。
第1次トランプ政権下では、日本は閣僚級の貿易協議や物品貿易交渉など、時間をかけて自動車関税の発動回避を狙った。最終的に日米貿易協定交渉で、農産物市場の一定の開放と引き換えに自動車関税を免れた経緯がある。
しかし、第2次政権は「(協議の)枠組みをつくることに前向きではない」(日本政府関係者)。従来とは異質の交渉に戸惑う声もある。
トランプ政権は今回、トヨタ自動車の米国販売台数を例示し、米国車の日本へのアクセスに不満を表明。一方、赤字解消などを条件に関税が下がるとして、「ディール(取引)」さながらの揺さぶりもかけた。武藤氏は「日本、米国の国益がそれぞれあるが、その立場を超えて共通点を見いだせるようしっかり議論する」と話すが、妙手は限られている。
〔写真説明〕記者会見する武藤容治経済産業相=3日午前、経産省
(ニュース提供元:時事通信社)

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