2022/12/18
事例から学ぶ
不動産や車両、物品のリース・レンタルや保険などを手がける東京センチュリー(東京都千代田区、馬場高一社長)は東日本大震災をきっかけに、2011年から備蓄品の確保を開始した。2012年、企業に3日分の備蓄の努めを求めた「東京都帰宅困難者対策条例」を東京都が制定すると、BCPマニュアルに発災時の社内待機を追加。備蓄内容の充実とともに初動体制の整備を図り、訓練による検証と継続的な改善でその実効性を高めている。東京都の一斉帰宅抑制推進モデル企業にも選ばれた同社の取り組みを紹介する。
東京センチュリー
東京都
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.33(2022年12月号)に掲載したものです。
全拠点全社員3日分の備蓄を保管
東京センチュリーは約750人が勤務する本社を含め、東京に存在する3拠点と全国各地の13 拠点のすべてに、社員が3日間を社内で過ごせるだけの備蓄品を保管している。さらに、出資比率が100パーセントの子会社にも同等の備蓄品をそろえている。
総務部企画グループ次長の湯沢慶一氏は「歴代の総務部メンバーが試行錯誤しながら取り組んできた。基本的な備蓄品は取り組み初年度に予算を確保し、すべて揃えました。現在は、さらなる充実を目指しているところ。全体数が多く費用がかかるため一朝一夕には蓄えられないが、計画的に3年ほどかけて進める予定」と話す。
備蓄品の種類は水、食料、簡易トイレ、毛布、ランタン、エアクッションなど。食料は5年周期で入れ替えている。備蓄品選びは、展示会などに足を運んだり、ウェブ検索で取り寄せたりして試す。昨年は食料を入れ替える2回目の年で、総務部のメンバーで試食し、新たな食料を選定した。
備蓄食料の進化には目を見張るものがあるという。水やお湯を注ぐだけでふっくらしたご飯が食べられるアルファ米や、さまざまなレトルト食品、水や火を使わず温められるものなど多種多様だ。同社で特に評判がよかったのは、アルファ米のわかめご飯だった。適度な塩気があり、風味がはっきりしているというのがその理由だ。
被災時の実用をより意識した備蓄
昨年の入れ替えで追加したのが、生理用品だった。備蓄品を選ぶメンバーに女性が参加したことがきっかけ。「配慮が足りなかったと言えばそれまでだが、我々にとっては大きな一歩。今期の備蓄品の追加リストに化粧落としがあるように、これからも多様な社員の具体的な行動を想像し、意見を募って充実させていきたい」と湯沢氏は語る。今後は待機場所などのプライバシーに配慮できる取り組みも進める予定だ。
備蓄品の選定メンバーに女性が加わったことは、選定担当者だけではなく、全社員にとってプラスになった。「より生活を意識した備蓄を考えるようになった」と湯沢氏は話す。採用は未決定だが、必要性を感じているのが体拭きシート。非常時の滞在中も仕事は継続するため、不快感を少しでも取り払える備蓄があればと思い至った。
備蓄とともに、食品ロスの削減にも力を入れる。2016年の備蓄食料の入れ替えでは、レトルト食品など約2200個をフードバンクに寄付。昨年は、約1000人分の食料品と水を全国のフードバンク8団体に届け、入れ替え食料の廃棄ゼロを達成した。
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