超高齢社会を前提にした法制度改正と体制整備
第32回:被災者支援のあり方検討会(2)
跡見学園女子大学観光コミュニティ学部/
教授
鍵屋 一
鍵屋 一
1956年秋田県男鹿市生れ。早稲田大学法学部卒業後、板橋区役所入区。防災課長、板橋福祉事務所長、契約管財課長、地域振興課長、福祉部長、危機管理担当部長(兼務)、議会事務局長を経て2015年3月退職。同時に京都大学博士(情報学)。同年4月から跡見学園女子大学観光コミュニティ学部コミュニティデザイン学科教授、法政大学大学院、名古屋大学大学院等の兼任講師を務める。主な有識者会議としては内閣府「避難所の役割に関する検討委員会」座長、「地域で津波に備える地区防災計画策定検討会」委員、「防災スペシャリスト養成企画検討会」委員等。役職として内閣府地域活性化伝道師、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、NPO法人東京いのちのポータルサイト副理事長、(一社)マンションライフ継続支援協会副理事長、認定NPO法人災害福祉広域支援ネットワークサンダーバード理事など。著書に『図解よくわかる自治体の防災・危機管理のしくみ』『地域防災力強化宣言』『福祉施設の事業継続計画(BCP)作成ガイド』(編著)『災害発生時における自治体組織と人のマネジメント』(共著)など。
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前回に引き続き、私が座長を仰せつかっている「被災者支援のあり方検討会」について。同検討会はより効率的で質の高い被災者支援の仕組みづくりについて中長期的な検討を行うもので、6月に開かれた第3回の議事要旨がこのほど公開された。議事要旨(アミがけ部分)をもとに、現時点の問題意識を報告する。
災害対策基本法施行から時代は大きく変化
1.全体について
(議事要旨)
被災者支援を考えるとき、被災者の生命と尊厳が脅かされる状態になっているのだから、社会全体でリカバリーしなければいけないというのが、基本理念として必要ではないか。
これは私の発言だが、多くの委員も同感してくれている。
災害対策基本法の目的は「国土及び国民の生命、身体及び財産を災害から保護する」である。しかし、生命と身体、財産を保護するだけとなると、介護保険法に定める「(要介護等の者が)尊厳を保持し、 その有する能力に応じ自立した日常生活を営む」、障害者総合支援法に定める「(障害児者が…)尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営む」といった尊厳の視点が抜け落ちてしまう。
それが、劣悪な避難所環境に表れてもきた。たとえば、高齢者、障がい者が利用しにくい仮設トイレ、夜泣きする赤ちゃんと保護者が周囲の目を気にせずに過ごせる避難スペースがない、男女の性別役割意識が強い運営、プライバシーへの配慮に欠け、時に性暴力を生んでしまう避難所環境、などなどだ。
さらには、避難所環境が劣悪で使いにくいがゆえに、壊れた自宅や車中泊を強いられる高齢者等が数多くいる。場合によっては関連死にもつながりかねない。すなわち尊厳を守れる避難生活環境がなければ命さえ危ないのが、現代の高齢社会だ。1962年施行の災害対策基本法の目的に、現代の超高齢社会のイメージがないのはむしろ当然であり、私たちが今の時代にふさわしい法改正を進める責務を負っている。
2.避難生活の環境改善について
(議事要旨)
被災者支援や広域的な避難者の受入れについて、統括的に担当する部署が必要という意見に賛成。国においても、その方向性を打ち出すべきではないか。
被災者支援が、たとえば住宅再建、雇用、医療福祉、子どもの教育など、平時の行政の縦割りの中で行われると、被災者は大変な負担感を感じてしまう。また、平時は足らざるものを補うだけでよかったのが、災害時は足りないものだらけ、不安だらけになるので、行政による支援だけではとても追いつかない。
しかし、現状は被災者支援の総合窓口が明確でなく、結局はその調整を被災自治体はじめそれぞれの現場の裁量で行わざるを得ない。そのため民間のヒト、モノ、カネ、場、情報の善意を大量に動員したいところだ。前回も述べたが、官民連携の(仮)被災者支援センターがそれ。ここが外部資源を大量に調達し、上手に配分する調整機構になる。
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