副業・兼業のリスクマネジメント
安全配慮義務や情報漏洩に要注意
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2022/08/26
ニューノーマル時代の労務管理のポイント
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
副業・兼業の希望者が増加傾向にあり、今後も増え続けることが予想される一方で、企業としては社員の副業・兼業には様々なリスクがあると感じていることと思われます。そこで、今回は、副業・兼業に伴うリスクとその対策ついて解説します。
社員の健康管理は、企業にとって大きな課題です。労働契約法第5条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」としており、企業は、雇用するすべての社員に対して、安全配慮義務を負っています。
社員が副業・兼業に入れ込みすぎてオーバーワークになり体調を崩した場合、原則として、会社は安全配慮義務違反に基づく責任を負うことはありません。会社の業務と副業・兼業先の業務を合わせて行うことでオーバーワークになっている場合も、会社の業務がオーバーワークになっていなければ、原則として、責任を負うことはありません。ただし、副業・兼業を行う社員がオーバーワークになっていることを把握しながら、何らの措置もとらず放置し、その結果、社員の健康に支障が生じるに至った場合には、会社の安全配慮義務違反を問われる場合があるので注意を要します。
かかるリスクへの対策としては、社員の健康保持を目的として、就業規則により、副業・兼業の状況について、副業・兼業の開始時に申告させ、さらに定期的に上司等に報告することを義務付けて、その内容から副業・兼業による過重労働や長時間労働により健康に支障をきたすおそれがあると判断されるときは、副業・兼業を制限又は禁止する体制を整えることが考えられます。
また、副業・兼業の促進に関するガイドラインでは、この点に関して、「副業・兼業を行う者の長時間労働や不規則な労働による健康障害を防止する観点から、働き過ぎにならないよう、例えば、自社での労務と副業・兼業先での労務との兼ね合いの中で、時間外・休日労働の免除や抑制等を行うなど、それぞれの事業場において適切な措置を講じることができるよう、労使で話し合うことが適当である。」としています。
なお、一般健康診断や長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックやその結果に基づく事後措置等の労働安全衛生法に基づく健康確保措置の実施対象者の選定に関しては、会社での労働時間と副業・兼業先での労働時間を通算する必要はありません。しかしながら、リスクマネジメントの観点から、法令の定めを上回る健康確保措置を実施することが考えられます。
副業・兼業先の事業内容や業務内容が会社の事業内容や社員の業務内容と競合する場合は、副業・兼業先に会社の技術情報や営業情報が漏えいしたり、会社の売り上げとすべきものを副業・兼業先の売り上げにされてしまうことが懸念されます。
情報漏えいリスクや競業避止義務違反のリスクなどがある場合、会社は、必要な範囲で社員の副業・兼業を禁止または制限することができます。厚生労働省のモデル就業規則では、副業・兼業に関して次のような規定例が示されています。
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