フリーランス新法制定の背景

働き方が多様化するなかで、近時では、「フリーランス」として組織に属さずに個人として活動する人が増えています。内閣官房が実施した2020年の調査では、462万人がフリーランスとして働いており、経済の担い手としての位置づけが強まっています。

画像を拡大 「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2024」(連合調べ)

2024年8月5日に日本労働組合総連合会(連合)が公表した「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2024」によると、「フリーランスとしての働き方満足度」について、「働きがい・やりがい」で62.5%、「プライベートとの両立」では65.6%の人が満足していると回答しています。

その一方で、「フリーランスとして仕事上のトラブル経験がある」と回答した人は46.6%となっており、半数近くの人が仕事上のトラブルを経験していることがわかります。具体的トラブルの内容は、「不当に低い報酬額の決定」、「報酬の支払いの遅延」、「一方的な仕事の取消し」のほか、「精神的な攻撃」や「仕事の関係性の中での不快感を感じるようなプライベートな要求」など、パワハラ、セクハラにあたるものが含まれています。
 
契約上のトラブルは、会社であれば独占禁止法や下請法による是正が図られます。ハラスメントなどの問題は、労働者であれば労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法に基づくハラスメント防止措置が取られます。しかし、これらの法律はいずれも、フリーランスとして働く人への適用関係が不明確です。

フリーランスとして働く人が増加し、フリーランスという働き方が社会的に注目を集めるようになるに伴い、保護が欠けているという指摘がされるようになりました。そのような状況のなかで、2021年3月に、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁および厚生労働省の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定され、事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法、下請け法および労働関係法令の適用関係が明確化されました。

さらに2021年11月、「新しい資本主義実現会議」の緊急提言の取りまとめに「新たなフリーランス保護法制の立法」という項目が盛り込まれました。そして、2023年4月28日に「特定受託事業者適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が成立し、2024年11月1日に施行されることになりました。