組織の生産性を上げるエンタープライズ・リスクコミュニケーション
今回は、CRO(Chief Risk Officer)の視点から、企業に求められているコミュニケーション戦略の重要性やポイントについて考察したい。
企業を取り巻く事業環境変化のスピードは年々加速し、それにともない多様なリスクが出現するなかで、経営の意思決定をサポートし、さまざまなリスクを適切に管理し、事業の成長につなげるCROの役割はますます重くなっている。
企業成長に向けたさまざまな取り組みにはリスクがつきもので、コミュニケーション戦略の視点から考えると、実に多様なステークホルダーからの評価を向上、維持させる必要がある。さらに危機発生時にどのように対応すべきかも、コミュニケーション戦略の重要な課題だ。
例えば、リスク管理部門には従業員の不祥事、コンプライアンス違反などを防ぐために必要な研修や風土改革のための施策=社内コミュニケーションが求められている。
広報、マーケティング部門では、不祥事などが起きた際にメディア対応を含む危機管理広報が必要であり、IR部門は財務情報だけでは投資家以外の多様なステークホルダーからの評価を維持できなくなってきた背景から、非財務情報の開示を求められる動きが国際的に強まってきている。
総務部門においては自然災害、新型コロナのような感染症が起きた際の、近隣住民や取引先を含むステークホルダーとのコミュニケーションの準備をしておく必要がある。
いずれの施策も平時、有事ともに関係するステークホルダーとのコミュニケーションが発生する。
このコミュニケーションは、企業としての大きな考え方のもとで、ワンボイス、ワンメッセージであることが望ましく、そのためには各部門で連携がとれた施策が必要である。
しかし、企業によっては、各部門から毎年同じようにリストアップされたリスクを並べるだけで、リスク管理が形骸化されているケースもある。コミュニケーション戦略においては、管轄する部署間でお互いに同じ方針のもとでリスク管理を行う体制が備わっていない組織が少なくない。
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