組織の生産性を上げるエンタープライズ・リスクコミュニケーション
人的資本における情報開示の新たなトレンド
今、日本はもとより世界的な潮流として、人的資本に関わる情報公開が注目されている。
2022年7月に厚生労働省は、女性活躍推進法を改正し、常用労働者301人以上の事業主に対して、男女賃金差異の実績の、情報公表を義務化した。
参照:「男女の賃金の差異の情報公表について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
日本政府として、企業に人的資本の情報開示を進めていく動きが加速している。
昨年2021年11月、岸田内閣が開催している「新しい資本主義実現会議」では、今後の日本には人的資本への投資が重要であること、そのために、有価証券報告書において人的資本を含めた非財務情報の開示を充実させることを、緊急提言として行った。
2022年4月から導入された、東京証券取引所のプレミアムおよびスタンダードへの移行を選択した場合には、本年12月末までに、コーポレートガバナンス報告書にて、人的資本に関する2原則の表明が求められている。
こうした動きは世界では数年前から始まっている。2020年8月、米国証券取引委員会は、人的資源に関する情報開示のルールを変更し、上場企業に対してより積極的な人的資本に関する情報開示を促すように求めた。
この動きの背景には、投資家が投資先を決める際に、人的資本の情報を求めるようになったというトレンドがある。ESG投資の流れの中で、投資家も企業の中長期的なパフォーマンスに注目するようになり、有形資産(設備、建物など)よりも、無形資産(人的資本やリスク情報に関する開示など)への注目が高まっている。
こうした米国の動きを受けて、日本でも人的資本の情報開示への注目が高まっている。
コミュニケーション戦略から人的資本に関する情報開示を考えると、SDGsなどがそうであるように、対応しない企業はステークホルダーから敬遠されてしまうリスクがある。世の中(投資家や顧客、従業員、地域住民といったステークホルダー)がこれを重要と思う潮流ならば、企業としては対応した方が良い。
一般的に、リスクコミュニケーションにおける取り組みの基本は、以下の3つのステップが知られている。
①危機が起きる前のリスク管理(準備/予防)
②危機が起きてからの対応(初動対応など)
③事態収束ための対応(回復)
「情報開示」は、①の前、もしくは③の後に位置するリスクコミュニケーションにおいて重視される、効果が高いステップとなる。
【リスクコミュニケーションのステップ】
こうしたトレンドにあって、人的資本の情報開示を進めることは、ビジネスや投資においてアップサイド(利益の可能性)を増やし、ダウンサイド(損失可能性)を削減することにつながる。
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