福祉避難所の実効性確保に向け福祉防災コミュニティ協会がマニュアル提供

福祉避難所の整備状況とマニュアルの無償提供

(一財)日本防火・危機管理促進協会は、令和3年度に「避難所外避難者の支援体制に関する調査研究」を実施し、3月に報告書を作成した。私も外部顧問として、質問作成などでお手伝いをさせていただいた。

この調査では、福祉避難所の現状についても調査している。全国1741市区町村のうち560市区町村から回答を得た(回収率32.2%)。主な結果は下図のとおり、福祉避難所ごとに個別の開設・運営マニュアルを作成している市区町村は15.5%、マニュアルに従って訓練をしているところが15%、必要な資機材、水、トイレ、食糧等を備蓄しているところが29.3%であった。

画像を拡大 福祉避難所の現状

8割以上の市区町村の福祉避難所には個別のマニュアルがなく、訓練もしていないという結果を見て、私たち(一社)福祉防災コミュニティ協会は、福祉避難所の開設・運営マニュアルをホームページで無償提供することにした。

福祉避難所の課題と運用

ある大都市の福祉避難所の説明では、今でも次のようにHPに書かれている。

【福祉避難所とは】
・高齢者、障害児・者、妊産婦、乳幼児などの要援護者のうち、体育館などでの避難生活に支障がある方には、各地域防災拠点で要援護者向けのスペースを確保することになっています。

【福祉避難所への避難】
・地域防災拠点や自宅での生活を維持することが困難で、特別な配慮を必要とする方が対象です。
・専門職(保健師)などが、本人の状況や要介護認定の有無などを確認し、福祉避難所への避難の必要性を判断します。
・福祉避難所が必要な機能や役割を果たすために、対象と判断されない方は避難することはできません。
・福祉避難所は、災害発生直後から必ず開設されるものではありません。

これらの運用は、一般の避難所には行けない要配慮者、たとえば認知症高齢者、精神障がい者、自閉症などの障がい児及びその家族への配慮が欠けているのではないか。また、福祉避難所へ行けるかどうかは行政が判断するものとし、要配慮者の自己決定権が考慮されていない。その結果、最悪の場合、要配慮者が避難を躊躇して逃げ遅れたり、困難な避難生活での関連死につながる。