「GoTo=感染拡大」という意図的な誤誘導
第14回:プロパガンダ情報が伝える行動規制とその現実
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2022/04/25
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
感染症対策のイロハのイは、感染者を特定し隔離して感染拡大を防ぐことであり、これに異論を唱える人はいないだろう。しかし「だから感染流行時には行動規制が必要だ」とするのは論理が飛躍し過ぎていると気付く人は多くない。実際、ここまでの状況を客観的に見る限り、強力なロックダウンでなければ行動規制で感染抑止に効果があったとはいえないだろう。
これは原理原則が間違っているからではなく、原理原則と対策の論理的不整合が原因なのである。例えば「感染者を特定」というが、その方法が問題である。一般的にPCR検査がその手法とされているが、偽陰性と偽陽性の問題、さらに非感染陽性の問題を統計的に検証すれば不適切であることは明確、検査はあくまで治療方針決定のための確定診断に留めるべきものなのだ(本連載第10回:プロパガンダ情報の伝えるPCR検査とその現実)。
最初の緊急事態宣言の頃は未知の部分も多く、安全寄りの判断で宣言が発出されたのは仕方がないだろう。だが、その後さまざまなデータが積み上げられ、経済復興のためにGoToトラベルという施策も行われたが、不安を煽る勢力から「人流イコール感染拡大リスクだ」とされ、中断に追い込まれた。では、実際にGoToトラベルと感染拡大に因果関係はあったのだろうか。
「GoToの利用経験と新型コロナウイルス感染症を示唆する症状との関連について」という論文が、2020年12月6日に公開された。査読前だが、緊急性が高いという趣旨での公開であった。そしてメディア、専門家、野党議員はこぞって、結論として「GoToは感染リスク高い」が研究結果だと伝えたのだ※。
※「GoToトラベル利用者に発症2倍 東大チーム初調査 味覚異常などコロナ疑い」(東京新聞web)、「GoToトラベル『感染リスク高い』調査結果を発表」(テレ朝news)など
一部のメディアは、同時に論文内記載の限界点も伝えてはいるが、一般社会では十分伝わる言い方には思えず、誤解が広まる結果になった。
このような状況で、詳細の確認が必要と当時感じたので、通読してみたところ、誤謬性の高い部分が散見された。確かに統計データ処理にはかなり気を使って精度を向上しているが、データを元にした考察では、結論ありきの感が否めなかった。意図した結論に導くためのデータ分析に終始しながら、結局のところ結論には導けなかったという内容だった。
その後、同論文は2021年4月16日に追記され、査読付きの国際医学誌であるBMJ Openに掲載されたのだが、プレプリント版よりも多くの変数で補正しているものの結果は変わっていない。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方