企業は社会に生かされているという認識
第10回:スポーツ・インテグリティからコーポレート・インテグリティへ

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2022/04/12
スポーツから学ぶガバナンス・コンプライアンス
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
今年1月5日から開始した本連載「スポーツから学ぶガバナンス・コンプライアンス」ですが、4月を迎えた今回で第10回になります。
私たちがスポーツを観たときに得られる感動の源泉には、スポーツ・インテグリティと呼ばれるものの存在があるのではないかという意識を起点にして、主として、スポーツ、スポーツ団体、オリンピック等とスポーツ・インテグリティとの関係を考察してきたところです。また、それを通して、スポーツ界の現状や取り組みについても、適宜ご紹介してきました。
ところで、本連載の目的は、スポーツ・インテグリティという概念を手がかりにしつつ、近時の企業経営・組織運営において重視されているガバナンスやコンプライアンスについて、そのあるべき姿を考えていくというものです。今後の連載において、いよいよその本題に入っていくことを予定していますが、それに先立ってこれまでのまとめをした上で、今後への架橋をお示ししたいと思います。
integrity(インテグリティ)という言葉を『Oxford Advanced Learner’s Dictionary 10th Edition』(オックスフォード大学出版)で引くと、1として「the quality of being honest and having strong moral principles」(筆者訳「誠実であり、強い道徳的信条を有しているという性質」)とあり、2として「the state of being whole and not divided」(筆者訳「完全であり、分割されていない状態」)とあります。
また、同語を『リーダーズ英和辞典第3版』(研究社)で引くと、「正直、廉直、高潔、誠実;健全;完全、無欠(の状態)、全一性」などと記載されています。
これらに照らすと、インテグリティとは、「(主として倫理的・道徳的な観点で)物事があるべき理想の完全無欠な状態にある姿・様子」と整理することができます。
また、スポーツ・インテグリティについて、スポーツ庁は次のように説明しています。
「「インテグリティ」とは、高潔さ・品位・完全な状態、を意味することば。スポーツにおける「インテグリティ」とは、「スポーツが様々な脅威により欠けるところなく、 価値ある高潔な状態」を指す」(スポーツ審議会スポーツ基本計画部会(第6回)(平成28年10月14日)、資料3、1頁)
このスポーツ庁による説明と先の整理を合わせ考えると、スポーツ・インテグリティとはスポーツのあるべき姿・状態であるといえます。
そして、このスポーツ・インテグリティという概念のもと、我が国では、スポーツ庁より「スポーツ団体ガバナンスコード」の策定・公表がなされるなどさまざまな施策が実施されており、国際的には、国際オリンピック委員会(IOC)は「インテグリティ≒信頼」と捉え、それを確保するための取り組みを実施していることをご紹介しました。
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