企業の説明責任における監事・監査役の役割とは(写真:写真AC)

どの会社でも危機管理マニュアルは作成しますが、経営トップや幹部による不正、逮捕の想定シナリオで作成するのは難しい。今後は監査役・監事の役割分担や記者会見での説明責任についても、危機管理マニュアルで盛り込む必要がありそうです。そう考えさせられた日本大学の一連の不祥事を取り上げます。

2つの事件が連鎖した日大の不正問題

日本大学の理事らによる不正問題は、第1事件、第2事件と話が複雑でややわかりにくいので、おさらいをしておきます。

第1事件は、日大事業部の井ノ口忠男氏が昨年10月27日に起訴された問題。井ノ口氏が病院建て替えの発注にあたり、設計監理者に水増しさせてリベートを受け取り、日大に損害を与えたとする内容です。これだけなら日大は被害者ですが、問題はそれだけではありません。

井ノ口氏は、日大アメフト部出身で、2018年に起きた悪質タックル問題で一度理事を退任したものの、検察が不起訴としたため、田中英壽前理事長から許されて日大事業部に復活していました。つまり、第1事件の問題は、事件で責任をとって辞任した人を簡単に復帰させてしまったことが環境要因としてあるのです。日大はチェック体制の不備について責任があるといえるでしょう。

第2事件は、田中前理事長の所得税法違反。昨年12月20日に田中氏は起訴されました。起訴に先立ち、日本大学は田中前理事長の逮捕(11月29日)を受けて、12月10日、記者会見を開きました。

田中前理事長は初公判で脱税の罪を認めた(写真:写真AC)

記者会見は、井ノ口氏の問題についての中間報告であり、田中前理事長の所得税法違反について最終報告書で述べるため、この日第2事件についての説明はありませんでした。2月15日の初公判で明らかになった内容は、1億1800万円の所得を隠して申告しなかった脱税の罪。この所得は日大に関係する業者から受け取った金銭で、第1事件の井ノ口氏から受け取った金銭も含みます。

やはり、第1事件と第2事件は連鎖しているといえます。