避難先や避難手段確保の課題を話し合っていく

政府や東京都、埼玉県、千葉県など地方自治体、JR東日本や東京メトロといった交通事業者などで構成する「首都圏における大規模水害広域避難検討会」の第1回会合が1日、東京都千代田区の内閣府で開催された。東京東部を中心に予想される大規模洪水に備え、広域避難場所の確保と避難手段確保・誘導についてそれぞれワーキンググループ(WG)を設置し検討することとなった。

同検討会は3月に内閣府が中心となっている政府の中央防災会議がまとめた「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難に関する基本的な考え方」の報告書を受け設置されたもので、座長は内閣府と東京都が務める。同報告書では行政区域をまたぐ広域避難を行う場合、避難にかかる時間が長時間となり避難途中で氾濫に巻き込まれる可能性があることなどを指摘。大規模・広域避難計画策定のための全体像の構築が必要とした。

また、例えば東京東部の墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区の東京都の江東5区で大規模洪水が起こった場合、人口255万人のうち最大178万人が域外避難の必要があるとされている。このような膨大な広域避難の場合、親戚宅など自主避難先を確保できない住民の避難先の用意も必要となる。

検討会では「広域避難場所検討WG」と「避難手段・誘導検討WG」の2つのWGを設置。広域避難場所検討WGでは広域避難者や受け入れ先の概数把握のほか、受け入れ先の増加や自主避難先の確保などに努める。また広域避難に要する費用負担や避難場所周知なども話し合い、関係機関の連携・役割分担のあり方をとりまとめる。避難手段・誘導検討WGでは避難手段確保へ鉄道事業者などへの要請や、避難誘導の課題を話し合う。避難手段では要請のタイミングや要請先の範囲の選定、誘導では橋や駅といった人が滞留しやすい場所の混雑緩和などを話し合う。

1947年のカスリーン台風の規模で178万人の域外避難者が発生するという想定では、避難経路を適切に割り振り最短化すると約3時間で避難完了となるが、避難者がばらばらに交通手段を選択すると、最短距離の避難でも約17時間かかるという。検討会では2019年度の冬ごろには最終とりまとめを行う予定としている。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介