土屋氏は東京の水害に対する弱さと備えの重要性を指摘した

高潮で23区の3分の1浸水も

東京都が3月30日に策定した「想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図」。1000~5000年に1度の台風と高潮、さらには河川での洪水や堤防決壊による被害を見込んだものではあるが、23区の約3分の1にあたる約212km2が浸水すると想定。東部を中心に浸水域は17区に広がり、墨田区や江東区では最大浸水深さ10m以上となるという衝撃のものだった。浸水被害にどう備えるべきか。元東京都および江戸川区職員で公益財団法人リバーフロント研究所の技術参与・土屋信行氏に話を聞いた。

土屋氏は東京の現在の特徴として「埋め立てによる人工島が増えて地形が昔と変化していることで越流が生じやすくなっている」と説明。台風の低気圧で生じる高潮により、波も含め東京湾は4~5mの高さの水が沿岸を襲う可能性がある。「これまで都には高潮と外水被害を組み合わせた被害想定がなかった。特に海から河川への遡上についてはほとんど考慮されてこなかった。3月の浸水想定は港湾局と建設局の垣根も越えていいものができたと思う」と評価。一方で「浸水というのは東京都だけでおさまるものではなく、区市町村境だけでなく県境をまたいだ広域での考え方が重要となる。また地震と違い気象情報である程度発生の予測はつくので、情報が入ればすぐ避難行動などをおこせる体制作りが必要」と土屋氏は指摘する。