震度6強以上で倒壊の可能性が高いとされた建物の一つ、新宿区の紀伊国屋ビルディング

緊急輸送道路沿道と大規模施設

3月29日、旧耐震基準の建物の診断結果を東京都が公表。延床面積1万m2以上の不特定多数が利用する大規模施設と特定緊急輸送道路沿道建築物が対象だったが、新宿区の紀伊国屋ビルディングなど著名な施設が震度6強以上で倒壊の可能性が高いことがわかった。また、調査対象の約3割が6強以上で倒壊可能性あり、約2割は倒壊可能性大という結果は大きな波紋を呼んだ。前日の28日にはある報告書のとりまとめも行われていた。公表までの流れを追った。

東日本大震災が起こった2011年3月11日、東京都議会で「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」(以下、条例)が本会議で可決・成立した。条例は災害時に輸送上重要となる道路の閉塞を防ぐため、沿道建築物の耐震化を推進するもの。旧耐震基準建築物の耐震診断が義務づけられたほか、診断を受けない建物の公表、診断や耐震化への助成などが定められた。全国的に見ても画期的な防災政策だった。

取り組みの成果もあり、都の統計によると2011年度末時点で75.5%だった建築物の耐震化率は、2016年12月には82.7%にまで上昇していた。診断率はこの時点で96.1%。しかし都・都市整備局市街地建築部耐震化推進担当課長の富永信忠氏は「診断は進んだが、耐震化が進んでいなかった。都では課題解決に向け新しい方法も必要だと感じていた」と説明。特に建物オーナーの意識の低さや、賃貸物件のテナント・賃借人移転の交渉の困難さといった問題がわかってきた。そのため都では2017年1月から「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた検討委員会」を設置。諸問題を解決するための検討を行うこととなった。

2013年には国が改正耐震改修促進法を施行。大型施設や緊急輸送道路沿道建築物の診断義務化のほか、診断結果の公表についても定められた。緊急輸送道路で国に先んじて対策をうった都だったが、今年3月28日の時点で診断結果の公表を行っていない都道府県は東京都と和歌山県のみの状態となっていた。