2016/03/24
誌面情報 vol54

デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主席研究員 茂木寿氏
2016 年、企業のBCP 担当者はどのような海外リスクに対して、どう備え行動しなければいけないのか? グローバルビジネスリスクの専門家であるデロイト トーマツ 企業リスク研究所主席研究員の茂木寿氏に、2016 年にグローバルで起こり得る11のリスクと日本企業へ及ぼす影響、その対策について聞いた。
海外リスクは国内より数倍高い
今、世界は政治経済・社会などすべての面で非常に流動化している。グローバリゼーションが進展し、人・物・金・情報・サービスが瞬時に世界中を移動できる時代になった。一方でさまざまなマイナス面も生まれている。
日本の企業は、海外進出する際、多様なリスクを洗い出し、評価をしていることだろう。しかし、1回やっただけで終わりにするのでは意味がない。世界情勢はめまぐるしく変わり、新たなリスクが次々に出てきている。特に新興国におけるリスクは多岐にわたる。
「企業をとりまくリスク」は幅広い。これは海外リスクに限らず、日本国内でも同じだ。ただし、日本国内よりも海外のほうがリスクの影響度が大きい場合が多く、発生頻度も高いことが多い。したがって、海外のビジネスリスクというのは国内よりも数倍高いと見たほうがいい。
日本企業をとりまくリスク
それでは、日本企業を取り巻く海外のリスクを見てみよう。
NO.1 自然災害の増加
まず考えなくてはいけないのは自然災害だ。世界的に非常に増えている。BCPにおいても自然災害は大きな脅威になる。自然災害が増える理由は気候変動もあるが、もっとも簡単に考えれば、人が増えるからだ。今、世界の人口が73億人と言われている。これが2100年には100億人を超える。人が増えれば自然災害も増える。なぜかといえば、自然災害は人に影響を与えるから「自然災害」と言うのであって、誰もいない南極で大きな地震があっても、誰一人影響を受けなければ、それは自然災害にはならない。もう1つは、新興国では主に内陸部から沿岸部に人が移動するため、河口で都市化が進むと、それまで水はけができていた土地がコンクリートで固められ水はけができなくなり災害を引き起こす。2011年にバンコクで大きな洪水があったが、今後も世界的に内水型の洪水被害は続くことだろう。
残念ながら、新興国は日本ほど素晴らしい防災対策というのはとられておらず、予算もあまりついていない。例えば、バンコクでは2011年に大きな洪水があったが、政府がそれに対して抜本的に対策をとっているかというと、かなり疑問符がつく。各工業団地やメーカーでは今、2m~3mの防護壁のようなものを独自で作っている。そして、土台を積んでなるべく底上げをして、場合によっては2階に重要な設備を持っていくというようなことをしている。国が守ってくれないなら自分たちでやるしかないということだ。
誌面情報 vol54の他の記事
おすすめ記事
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方