2021/09/14
事例から学ぶ
路線バス事業を主軸に観光、不動産、保険事業を手掛ける芸陽バス(広島県東広島市、安井千明社長)は、2018 年西日本豪雨の被災経験からBCPを策定。有事に備えた組織体制の遅れで連携不足が顕在化した教訓を生かし、部署・個人に蓄積されている「知恵」と「思い」をドキュメント化して共有する取り組みを進めている。被害状況と路線条件に応じてリソースの優先配置を采配するノウハウを「災害時路線維持計画」にまとめるなど、成果を積み重ねるなかで社員の意識が変化。地域の暮らしになくてはならない仕事という共通意識が醸成され、お互いの声掛けが増えるなど、組織の活性化につながっている。
芸陽バス
広島県東広島市
❶西日本豪雨で浮き彫りとなった課題
・西日本豪雨の災害対応と路線復旧にあたり、有事の組織体制・ルールが練られていなかったことによる連携不足が浮き彫りに
❷部署や個人の中にある「知恵」「思い」をドキュメント化して全社共有
・部署が蓄積している知恵、個人が持っている思いを明文化し、全員に分かるよう共有。典型的な文書が「災害時路線維持計画」
❸持続可能な会社の旗印としてのBCP
・住民の生活に根差し地域の存続になくてはならない会社という旗印がBCPによって明確化。社員同士の対話や声掛けなど組織活性化につながる
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders
「路線バス」「観光」「不動産」「保険」の4つの事業部門がある。売上のおおむね9割は、主軸の路線バス事業。約100 両の乗合バスを保有し、本社のある東広島市を基盤に広島市、竹原市、三原市で全48 路線を運行する。
安全対策の基本は、国土交通省の指針にもとづく「運行管理規程」だ。事故・災害防止の観点から運転士の資格や配置、勤怠、車両の整備、保守点検、インシデント発生時の対応などを細かく定めたもの。大雨や強風時の運行についても「異常気象時措置要領」に従って雨量や風速の基準を設け、常にこれを見ながら必要な対応を行っている。
「その意味では、事故・災害を想定したマニュアルがなかったわけではない。ただ、あくまでバス部門のみの運用で、全社的に浸透している状態ではなかった。万が一の備えを組織全体として考える姿勢は、少し弱かったかもしれません」。第二営業部関連事業課の宮脇由佳課長はそう説明する。
このことを実感したのが、2018 年7月に発生した西日本豪雨だ。BCPの策定を検討していた矢先のことだった。
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