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被害が拡大した理由は直後の行動
御岳山の噴火では、火口からたくさんの石が飛んできて、山頂近くにいた多くの方が犠牲になりました。ゴルフボールぐらいの大きさのものから、数十㎝ぐらいのものまで。犠牲者が増えた理由は、まずは噴火のタイミングです。天気の良い日で絶好の登山日和で、さらに悪いことにお昼のちょっと前でした。皆、見晴らしのいいところに弁当を持って行って食べようとしていた時間帯です。もう1つの原因は噴火の最初にクライマックスが来たことです。1番激しい状態が、噴火とほぼ同時に起きたわけです。1979年に御嶽山では史上初の噴火を起こしましたが、この時は最初に火山灰がブワッと吹き出すぐらいで、それから数時間が経って今回のような石をバンバン吹き出す噴火に変わりました。登山客が山頂にいっぱいいましたが、皆灰が降って来たので、急いで下山し、結果、1人のけが人も出ませんでした。

今回は山頂近くにいた数百人のうち60人ぐらいの方がお亡くなりになったわけですが、かなりの数の方は、噴火と同時に山小屋の中に駆け込みました。山小屋の主人も小屋に入れと言って、それに従った人たちは1人も亡くなっていません。

変な煙がでている、変な雲が出ているというので、写真撮影をしたり、場合によってはそれを背景に記念撮影までしていた方もいました。それが数十秒から1分位経ったところで、空から火山灰が降ってきたのです。一瞬のうちに真っ暗になったはずです。昼間でも自分の手が見えないほどの暗さだったことでしょう。山小屋の前に立っていたとしても、どこに山小屋があるのかもわからない状態ですから、逃げようがないのです。噴火があると、どういう現象が起こるのかを、しっかり理解していると、それなりに身を守ることができる場合もあります。

警戒レベル1でも噴火する

噴火警戒レベルは、気象庁が発表するものでレベル1からレベル5まであります。これは住宅地に危険が及ぶのはどのくらいかということで考えられた警戒レベルです。居住地の周辺に影響が及ぶので避難の準備をしたり、あるいは避難しなければいけないという場合にはレベル4、レベル5ということになります。

ほとんどの火山では出されたことがありませんが、口永良部ではレベル5が出されて全島避難になりました。桜島でも一旦レベル4に上げたことがありますが、ほぼ一瞬だけでした。それ以外はほとんどの場合レベル3までです。レベル3は、火口から居住地区まで数㎞から4㎞ぐらいの範囲は危ないかもしれないが、それより遠ければ上から火山灰が降って作物が影響が受ける程度で人命には影響がないというレベルです。

ただし、問題はレベル1の時で、「平常」という言葉を使ったことで、平常というのは噴火が起きない状態だと思われてしまったかもしれないとの反省があり、今は「活火山であることに留意」という言葉に変えました。ですから活火山である以上、いつ何時でも、噴火が起こるかもしれないことに注意すべきです。 

この噴火警戒レベルが作られてから、多くの人が「噴火警戒レベルがあるのだから、気象庁は予知をしてレベルを上げて噴火前に知らせてくれるだろう」と思い込んでしまっていますが、実は違います。この噴火警戒レベルを引き上げる時には、噴火が発生してから上げることもあるし、あるいは噴火の恐れがあることがわかって上げることもあります。つまり、予知ができないこともあることを前提にしているわけです。