倒壊した建物や崩れた土砂の隙間から人間の生体反応を感知し、被災者の救出を助ける災害救助犬に注目が集まっている。

一昨年に広島市で起きた土砂災害では災害対策本部に災害救助犬の担当窓口が設置されるなど、被災現場での認知度も上がり活躍の場が広がっている。

NPO法人救助犬訓練士協会(RDTA:Rescue Dog Trainers’Association)は災害救助犬とハンドラーの育成を行う組織の1つだ。災害救助犬の国内の活動状況と今後の課題を聞いた。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2016年1月25日号(Vol.53)掲載の記事を、Web記事として再掲したものです。(2016年7月14日)

人の入れないような小さな隙間から、がれきや土砂の下敷きになっている被災者を見つけ出し、ハンドラー(訓練士)に伝えて救助をサポートする災害救助犬の活躍が目にとまるようになった。NPO法人救助犬訓練士協会(RDTA:Rescue Dog Trainers’Association)顧問の山田道雄さんは「協会が設立されて約10年になります。少しずつ認知度が上がり、被災現場で受け入れられるようになってきました」と語る。

RDTAは、災害救助犬とハンドラー(訓練士)を訓練する目的で2005年に設立された。災害が起こればボランティアとして現地にかけつけ、被害者の捜索に協力する。

昨年末、2004年の新潟県中越地震で、発生から92時間後に瓦礫の中から男の子(当時2歳)を発見した警視庁警備犬のレスター号が老衰により死亡し、各メディアで話題になったが、2007年に起きた中越沖地震では、RDTAが即座に災害救助犬とハンドラーを派遣したものの、災害対策本部の指示で捜索活動に参加できずに終わった。

初めて災害現場に立ったのは2008年に起きた岩手・宮城内陸地震だった。最大震度6強が記録され、死者13人、行方不明者10人を出したこの地震で第一陣として4頭の救助犬と4人のハンドラーを宮城県栗原市に派遣した。栗原市は被害の最も大きかった自治体で、この地震による死者13人は全て同市の市民だった。

栗原市災害対策本部からの指示で、RDTAの災害救助犬とハンドラーは、国道が土砂崩れで寸断された花山地区までをヘリで移動。捜索する現場は高さ約250m、幅約50mののり面が崩壊した場所で、流れた土砂は国道から約200m下の谷底まで及んでいた。二次災害を警戒し、救助犬だけが崩れた土砂の上を歩き回り生体反応を捜した。

山田さんは「災害救助犬の役割は生存している被害者の発見です」と説明する。結局、生存者は見つからなかったが「ご遺体には反応しないので、重機投入や捜索終了のタイミングをはかる重要な役割も担っているのです」と付け加える。

東日本大震災では、警察庁の要請により宮城県に災害救助犬とハンドラー2チームを派遣。1チーム3頭4人で構成され、合わせて6頭と8人が捜索にあたった。一昨年に74人が犠牲になった広島市の土砂災害では全国各地の団体から災害救助犬が集まり、協力して捜索にあたった。「災害対策本部に災害救助犬運用の担当窓口が置かれ、重要性の認識が広がったという確信を得たケースでもありました」と山田さんは振り返る。