台風15号による南房総市の被害

昨今、地球温暖化のためか、『数十年に一度』『百年に一度』等という、激甚災害が立て続けに発生している。激甚災害は、日常的に発生する時代になったのであろうか? 本稿では、自然災害発生時の社会インフラ復旧に関し『少子高齢化等に起因した人手(技術者)不足に起因するリスク』など、デジタル時代の問題を提起をしてみる。

2019年9月8日に関東に接近した、台風15号において、千葉県の房総半島の内房地域を中心に、電力インフラ起因(送電線鉄塔の倒壊、支持物の折損・倒壊等、架空線の断線等)により、広域かつ長期間の停電が発生し、二次的に、情報通信、上下水道、交通等の社会インフラにも大きな影響が広がった。

リスク事例として、台風15号による、広域・長期停電という激甚災害の復旧対応事例にフォーカスして解説する。

1.人手不足という社会問題

現代社会において、建設(電設)業界に限らず、『人手不足』が深刻な社会問題になっている。
・ 高齢化
・ 雇用のミスマッチ
・ 働き方の多様化(コロナ禍で加速)

少子高齢化が起因と思われるが、『人手不足』は労働人口の減少や雇用のミスマッチなど、複雑な問題が絡み合う問題であり、日本においては、2050年には、6人に1人が65歳以上の高齢者となることが予測され、世界でもトップクラスの『超高齢国家』になろうとしている。

台風15号に起因する広域・長期停電は、電力会社の発電系統のトラブルに起因するものではなく、最大風速40メートル/秒という強風により、鉄塔や電柱が倒壊、送電線・配電線などが断線するなど、社会インフラとしての電力システムの物理的な損傷により発生した。

房総半島のほぼ全域にわたる広域の被害であったため、復旧には、電気関連の各分野の技術者・技能者の大量投入が必要な状況になった。

電力インフラ復旧において、『高圧以上の設備』では、電力会社系列の工事会社、大手電設会社(元受、下請、孫請等)による復旧工事、『低圧系の設備(引込線)』などでは、地元の電気工事業者等による復旧工事が災害対応の基本体制となっている。

台風15号では、保全されていない森林などにおける倒木等も多数発生し、2000本近い電柱が、破損・倒壊し、復旧には、電力インフラの技術者・技能者以外の分野からも、自衛隊などを含め大量の災害復旧応援要員の投入が必要な状況になった。

一方、近年では、通常の電設業務においても人手不足が深刻化している。業務に支障がでている状況で、東京オリンピック後は、さらに状況が悪化すると予測され『限られた人員を適正配置しながら災害対応に臨む』ことは、困難になりつつある。

コロナ禍以前は、人手不足は、外国人技能実習生などで補ってきた業界はあるものの、『電気工事』はそもそも技能実習の職種範囲には入っていないため、現状、電気工事対応では、外国人技能実習生は受け入れられない。そのため、コロナ禍が収束したとしても、電気工事での人手不測の解消は期待できないであろう。今後、激甚災害が発生の場合、電力系の社会インフラの早期復旧は見込めるのであろうか?