BCMの専門家や実務家による非営利団体BCI(注1)は、『Good Practice Guidelines』の改訂版「Edition 7.0」を、2023年10月31日に発表し、翌11月1日から提供を開始した。BCIの会員ならPDF版を無償でダウンロードできるようになっており、会員でなくてもBCIのWebサイト(https://www.thebci.org/shop.html)から購入できる(注2)。
筆者は11月1日から2日間にわたって開催された「BCI World Hybrid 2023」(注3)に参加するためにロンドンに行き、10月31日に行われた発表セレモニー当日に改訂版を入手した。そこで本稿では新しいGood Practice Guidelinesについて、旧版からの主な変更点を紹介していきたいと思う。
Good Practice Guidelines とは何か
まず、Good Practice Guidelines(略称「GPG」)を知らない方々のために、GPGについて概略を説明させていただく。これは事業継続に関して世界で最も参照されているガイドラインのひとつで、2001年に初版が発表されて以来、図2の左側のように数年おきに改訂を重ねて現在に至っている。従来は発行された年で区別されていたが、今回からは「Edition 7.0」という形で版数を付けて呼ぶように改められた。
なお発表セレモニーにおけるBCI会長Heather Merchan氏のコメントによると、今後は従来より短い間隔で、7.1、7.2、....というようにマイナーアップデートが行われるようである。
GPGの改訂はBCI会員を中心として募集されたボランティアによって行われており、今回のEdition 7.0には計33人ものボランティアが関わっている。筆者自身も「PP6 Validation」というセクションを担当するグループのメンバーとして参加させていただき、インド、英国、カナダ、南アフリカのメンバーと一緒に、改訂文案を持ち寄ってオンライン会議を重ねながら改訂作業に取り組んだ。BCIはこのような形で、実際にGPGを活用してきた世界各国の経験豊富な実務家をGPGの改訂に関わらせることによって、旧版に対するフィードバックや、多くの人々のノウハウや経験をGPGに集積している。
またBCIのメンバーの中には、各国でISOの委員を務めている方々も多いため、GPGの改訂において検討・議論された結果が国際規格にも影響を与えている。図2の右側には事業継続に関する英国国家規格(BS 25999)および国際規格(ISO 22301/22313)の発行/改訂状況を記載したが、GPGの改訂で検討されたノウハウが規格開発の場に持ち込まれ、また規格が発行/改訂されたら、新しい規格との整合性を図るようにGPGを改訂するという関係になっている。
したがって今回のGPG改訂も、ISO 22301の2019年版や同22313の2020年版への対応が主要な目的のひとつとなっていた。また、2018年版が発表された後に、ISOから2つの関連規格と4つの技術仕様書(Technical Specification)が発行されており(注4)、Edition 7.0ではこれらとの関連や整合性も考慮されている。
GPGの構成は図3のように6つのセクションに分かれている(注5)。それぞれのセクションは「Professional Practice」(略称「PP」)と呼ばれ、事業継続に従事する実務家にとって必要な、実践的なノウハウが体系的にまとめられている。
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