2018/04/13
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
大人は悲しみを言葉にできても、子どもは言葉にできない
早川さんが実際に出会った子どもの状況です。
すかさず拳と頭の間に手を入れながら話したところ落ち着いたのですが、別な遊びの途中、急に「やっぱり私なんて死ねばいいんだ」と叫び続け、カベに頭を打ち続けました。
しばらくして落ち着いたときには普通の子どもに戻るのです。その変わりように驚いたのを覚えています。数日後、その子はオニゴッコで遊んでいる最中に急に立ち止まり何かを思い出したような顔つきになり「私なんかいなくなればいいんだ」と自分の髪をむしりだしたのです。
ボランティアが止めたのですがなかなか止まりませんでした。
早川さんによると、大人ほど多くの言葉を持たない子供達は、災害が起こったときに何かあると自分のせいにしがちだと言います。確かに、大人でも、あの時もっと早く出かけていればとか、あの時、別の道を通っていればとか、自分でできたはずの事に意識を集中して、自分を責めてしまいがちです。気持ちの表現が難しい子どもたちなら、なおさらですね。
そして、大人は、復興に向けて取り組むことができますが、子どもの気持ちはそれでは癒すことができません。
今回は、避難所における遊び場の必要性について早川さんに直接インタビューしてきました。
―― そんな時(被災時)にも遊びが大切だということでしょうか?
大人は気持ちを整理するために、たくさんの言葉で気持ちを外に出し、心を落ち着かせます。ですが言葉の数を持たず、使い方もつたない子どもは、ストレスを心にためてしまいます。そして時には、自傷などの行為で表現をします。しかし多くの子は、その溜めた気持ちを「遊び」に転化して、心に溜まったものを整理して出すことができるのです。その遊びのひとつが「地震遊び」「津波遊び」となります。
―― 中越地震の時からクローズアップされるようになり、東日本大震災では、早い時期から「地震遊び」「津波遊び」は癒しのプロセスなので止めなくて良いとアナウンスされていましたね。それ以外、遊びが子どもの回復にとって重要と思われたケースはありますか?
被災地で「遊び場」を作ると、さまざまなことが起きます。おとなしいと言われていた子どもがとても活発に遊び、走り回り、木端で人形を作り、椅子を作ります。避難所では小さい声でしか話さなかった子どもが大きな声で歌い、みんなと遊びます。
福島で遊び場を開催したときのこと。そこではあるお母さんが泣いていました。その視線の先には、友達同士でブランコを押し合っている子どもがいました。気になったので話しかけると「あの子、震災が起きてから初めて私の手を離れて遊びに行ったんです」とのこと。お母さんは子どもと地震のときに一度離れてしまい、避難所で再会したそうです。それからその子はトイレでもお風呂でも、片時もお母さんから離れなかったそうです。その日に初めて手を放して遊びに行ったのだと、涙ながら教えてくれました。
―― そのお話をカウンセラーの方に確認されたのですよね?
そうです。カウンセラーの方に確認すると、震災後には手を離さない子どもがたくさんいて、そういう話は山ほどあるとのこと。そして、決まって手を離れるときは「遊び」をきっかけにしているのだそうです。
―― 日本児童青年精神医学会・災害対策委員会作成「災害 被災した子どもを支援する方々へ」の中にも「子どもが昼間そこで大声を出して遊ぶことを周りの大人たちに認めてもらいましょう」と、遊びの重要性が書かれていますよね。多くの人に災害時、子どもには遊びが必要で重要という事が広がればいいなと思います。
早川さんはこの遊びの重要性を講演や執筆で訴えていらっしゃいます。
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