今年も最多となった「いじめ・嫌がらせ」の労働相談
個別労働紛争解決制度の解説
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2021/08/09
ニューノーマル時代の労務管理のポイント
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
厚生労働省では毎年、「個別労働紛争解決制度」の施行状況の集計結果を公表しています。「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働関係に関する紛争について、実情に即して迅速かつ適正な解決を図るための制度です。具体的には、次の3つの仕組みがあります。
①総合労働相談
都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物などに、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置して、専門の相談員が対応するものです。
②助言・指導
民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が紛争当事者に対して解決の方向を示すことで、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度です。助言は、当事者の話し合いを促進するよう口頭または文書で行い、指導は、当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘し、解決の方向性を文書で示します。
③あっせん
都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図るものです。
令和3年6月30日付で厚生労働省が公表した「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、令和2年度に労働局などに寄せられた総合労働相談は129万782件で、13年連続で100万件を超えて高止まりしています。また、民事上の個別労働紛争の相談、助言・指導の申出、あっせんの申請の全項目で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が前年に引き続き最多となっています。
過去10年間の個別労働紛争の主な相談内容の推移を見ると、平成24年度以降、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数が、「解雇」や「労働条件の引き下げ」などの相談件数と比べてダントツに多くなっていることが分かります。令和2年度の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、前年比9.6%の減少となっていますが、これは令和2年6月に改正労働施策総合推進法が施行されたことにより、大企業の職場におけるパワーハラスメントに関する個別労働紛争については労働施策総合推進法により対応することとなったため、同法施行以降における大企業の当該紛争に関するものが「いじめ・嫌がらせ」に計上されていないことによるものです。
なお、大企業の職場におけるパワーハラスメントに関する相談件数は、1万8363件となっており、仮にこの相談件数と「いじめ・嫌がらせ」の相談件数を合算すると9万7553件となり、令和元年度における「いじめ・嫌がらせ」の相談件数(8万7570件)と比べて、1万件近く増加していることになります。
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