業種や業態、規模、地域は違っても、危機管理担当者の悩み、やりがい、目標、思いには共通点が多くある。組織の垣根を越えてそれらを共有することは、個々が直面する課題解決のヒントになるはず。企業の防災・BCP、リスクマネジメントの現場をまわす実務者に今の取り組みと仲間へのアドバイスを聞くシリーズの第3弾。

危機管理をアップデートするために

 
BCPリーダーへのQ&Aその3


ヤマハ(静岡県浜松市)
総務部BCP・保険・環境グループ主事
松島一博氏



松島氏のアドバイス
❶ 事業継続は従業員一人一人が命を守るところから。まずは防災意識を底上げ。
❷ 事業所や事業部門の担当者とコミュニケーションを取り、常に訓練の質を向上。
❸ 被災確率は会社以外のほうが高い。自宅や地域の防災にも目を向ける。
本記事は「月刊BCPリーダーズ」5月号にも掲載しています。月刊BCPリーダーズはリスク対策.PRO会員がフリーで閲覧できるほか、PRO会員以外の方も号ごとのダウンロードが可能です。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders

――現在の役職に至った経緯を教えてください。
出身地が静岡県浜松市で、東京の大学を出てUターン就職。1991年入社ですからちょうど30年になります。最初はアフターサービスの部署に配属され、楽器や音響機器の修理・メンテナンスを9年近く担当。その後、当社の音源を使った携帯電話の着メロを普及させるプロジェクトに携わり、半導体の営業を十数年担当しました。

総務部に異動したのは6年半前の2014年11月。ただ、きっかけはもっと前で、98年からプライベートで始めた災害ボランティアにさかのぼります。労働組合活動の関係でボランティア育成講座(連合東京ボランティアサポートチーム)に参加したのですが、講座を通じてとてもいい仲間に出会えました。

98年の夏、水害で被災した福島県の大信村(現白河市)に、その仲間たちとバスで支援に行ったのが最初の活動です。そこから数々の被災地に行き、東日本大震災のときは静岡県ボランティア協会が派遣する第13次隊に加わって活動しました。

その後も災害ボランティアコーディネーターの養成講座を受講したり、防災士の資格を取ったり。そうなると、今度はそれを仕事に生かしたくなります。当社には社員が自分の経験や資格を自己申告して仕事に生かす制度があるので、そこに申告したところ、防災・BCPの強化を課題としていた総務部への異動となりました。

――主にどのような業務を行っているのですか。
私が所属する総務部のBCP・保険・環境グループは総勢15人。うちBCPに携わるのは、グループリーダーを含め4人です。会社にはガバナンス上の組織としてリスクマネジメント委員会があり、その下部組織にBCP・災害対策部会があるのですが、その部会事務局を我々のチームが担当しています。

防災・BCPの取り組みは歴史が長く、防災に関しては、東海地震を想定した訓練を私が入社した頃すでに行っていたと記憶しています。当社の国内生産拠点は本社のある静岡県遠州地域に集中していますから、そこを中心に年2回の地震防災訓練を実施しています。