企業の業種・業態、規模、地域は違っても、危機管理担当者の悩み、やりがい、目標、思いには共通点が数多くある。垣根を越えてそれらを共有することは、個々が直面する課題解決のヒントにもなるはずだ。防災やBCP、リスクマネジメントの現場をまわすリーダーたちに今の取り組みと仲間へのアドバイスを聞き、Q&Aで紹介するシリーズの第2弾。

危機管理をアップデートするために

 
BCPリーダーへのQ&Aその2


臼井国際産業(静岡県清水町)
CSR推進室参与 堰沢一郎氏



堰沢氏のアドバイス
❶ 従業員へのアンケートは、リスク教育の格好の機会。リスクマネジメントのPDCAに組み込んでまわす。

❷ アンケートは感覚的な質問ではなく、定量的・定性的な指標を設定して自ら考えさせるとともに、結果を分析できるようにする。

❸ 風水害やコロナなどの危機を実感する時代は、社内の意識改革の機会でもある。
本記事は「月刊BCPリーダーズ」4月号にも掲載しています。月刊BCPリーダーズはリスク対策.PRO会員がフリーで閲覧できるほか、PRO会員以外の方も号ごとのダウンロードが可能です。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders

自動車メーカーの生産ラインを止めない

――会社の概要を教えてください。
自動車部品のグローバルサプライヤーとして、世界各国の自動車メーカーに主要部品を納入しています。国内拠点は本社のある伊豆を中心に10工場、ほかサテライト拠点が全国に12カ所、海外はアジア、アメリカ、ヨーロッパに14のグループ会社があり、国内の全自動車メーカー、欧米の大手自動車メーカーと取り引きしています。従業員は730人、グローバルでは約1万人です。

当社のミッションとしては、利益を社会に還元することはもちろんですが、そのためには計画的にモノを作ってタイムリーにお客さまに納入し信頼を得る。つまり、お客さまの生産ラインを止めない。そこを目指してリスクマネジメントをまわし、万が一の際の対応に備えるべく活動しています。

――主にどのような活動を行っているのですか。
グローバルでのリスクマネジメント活動が主業務です。マネジメント体系図を作成し、これにそってPDCAをまわしています。

具体的にはグループ従業員に対し、国内は全従業員、海外はスーパーバイザー以上ですが、リスク評価アンケートを実施。これをもとにグローバルにおけるリスクマネジメントのテーマと拠点ごとのテーマを選定し、それぞれ目標を定め、アクションプランを策定して運用しています。

画像を拡大 アンケートの結果、重点的に取り組むテーマを拠点エリアごとに設定。それぞれアクションプランを策定して活動する

リスク評価アンケートは、CSR推進室が洗い出した106のリスク、戦争・テロから品質不良、人材確保まで広範にわたりますが、それぞれの「影響度」「発生頻度」「コントロール度」を個々の従業員が評価。そこで特に重大と位置付けられたリスクにテーマを絞ってアクションプランを立て、各拠点に活動してもらっています。

活動の内容と成果は年2回、グローバルリスクマネジメント委員会で報告。そこにCSR推進室としてコメントを出します。パンデミックで中断していますが、コロナが始まる前は海外の拠点を年1回は回り、リスクマネジメントとはどういうものか、リスクアセスメントとはどういうものかの指導も行っていました。

私はもともと品質保証の担当で、品質管理システムの運用や監査、従業員教育のため、すべての海外拠点をまわってきた経験があります。その点では、品質マネジメントがリスクマネジメントに置き換わっただけともいえる。CSRの担当になって7年目ですが、比較的ストレスなくやっています。