2021/04/07
【オピニオン】新たにリスク部門に着任した人たちに贈る言葉
新たに防災・BCP・リスクマネジメントの担当になった方へ
パナソニック株式会社総務部リスク管理課
須山幸司(防災士・DRI認定CBCP)
経験年数9年
リスク部門担当者に期待すること
あなたはリスク部門に異動し、新たに自然災害対策や感染症対策やBCPを担当することになりました。でも間違ってはいけないのは、あなたは地震学者でも気象庁職員でも感染症医師でもありません。そういった個々のリスク事象に今後多少の見識を深めていく必要はありますが、専門家になれとは会社は言っていないはずです。
では、会社はあなたに何を期待しているのでしょうか?
それは、あなたが持っている「想定力」「情報収集/発信力」「提案力」を生かし、災害等のリスク事象と現場/事業への影響とを結びつけ、万が一に備えることにあると思います。
情報収集/発信力:現場の人的あるいは物的な被災情報をICT等も活用し効率的(迅速かつ正確)に収集し、経営幹部や社内関連部門との情報共有を速やかに図る能力
提案力:「想定力」「情報収集/発信力」にもとづき、被災した現場や事業に対して会社として次に取るべきアクションは何かを提案し、初動対応や復旧対応の経営判断が的確に行えるように支援する能力
会社はあなたのスキルやいままで培ったキャリアに、上記のような「想定力」「情報収集/発信力」「提案力」の可能性を感じているのではないでしょうか。
これからのあなたには、災害等のリスク事象と現場/事業への影響とを結びつける能力をさらに磨き、非常時だけでなく平時も、リスク対策・BCPの分野で活躍することが期待されているのです。
あなたの能力にさらに磨きをかけるための3つのワーク
①フットワーク
できるだけ腰軽く、できるだけ多くの事業場を回って、現場を知ること。
どんな事業をどんな生産プロセスでどんな人が担当しているのか、工場は5Sが行き届いているか、この拠点は川の氾濫が心配だ、この工場は海のそばで津波のリスクが高そうだ、この拠点は建屋の耐震対策も生産設備の固定もしっかりできている等…。
数多くの事業場の現場の印象を自分の心に刻み付けておくことが、「想定力」を高めることにつながります。
②ハートワーク
リスク対策もBCPも、リスク部門担当者が1人で対応できるわけがありません。事業場で防災を担当している方、関係会社でBCPを担当している方、施設原動や生産設備や調達や物流や人事労務や経理財務や、多くの協働者が必要です。
協働者をさまざまな機会にリスク対策活動に巻き込み、関係性を深め、常に学ぶ心・素直な心で、感謝を忘れずに接していく心がけが大切です。その積み重ね、人との絆が、災害や事故という緊急事態時にも、迅速かつ正確な情報を収集できる「情報収集/発信力」を高めることにつながります。
③ヘッドワーク
我々が事業をしている以上、リスク対策やBCPの投資コスト対効果や前年度からの進化点を経営幹部に認めてもらう必要があります。
そのために、最新のリスク事象(例えば自然災害の多様化・頻発化、水災リスクの高まりなど)やリスク対策のトレンド(例えばオールハザードBCP、オンラインの活用など)を常に研究・ベンチマークし、自社でのリスク対策・BCPの取り組みに新たに生かすことができないかを考えていく。このような創造と企画推進のチャレンジの積み重ねが、経営幹部の信頼を高め「提案力」を高めることにつながります。
この3つのワークを意識して、リスク部門担当者としての能力をさらに磨いていってください。
最後になりますが、リスク部門担当者には、従業員の生命を守る・会社の資産を保持する・お客様の事業を止めず信頼を維持する・地域社会を災害から守るといった、あらゆるステークホルダーに貢献する使命があります。ぜひ、この使命を忘れずに、リスク部門担当者としてのご成長・ご活躍を期待しております。
【オピニオン】新たにリスク部門に着任した人たちに贈る言葉の他の記事
- 常に問う「本当に命を守る行動が取れるのか」
- 「リスク評価アンケート」を従業員への教育活動に
- BCPはより戦略的に、複数シナリオで準備
- 新しい力でリスクマネジメントのDXを起こそう
- 3つのスキルと3つのワークを意識して
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方