新たに防災・BCP・リスクマネジメントの担当になった方へ

 
先輩からのエール(1)
パナソニック株式会社総務部リスク管理課
須山幸司(防災士・DRI認定CBCP)
経験年数9年

リスク部門担当者に期待すること

スタートラインの危機管理担当者。求められていることとは?(写真:写真AC)

あなたはリスク部門に異動し、新たに自然災害対策や感染症対策やBCPを担当することになりました。でも間違ってはいけないのは、あなたは地震学者でも気象庁職員でも感染症医師でもありません。そういった個々のリスク事象に今後多少の見識を深めていく必要はありますが、専門家になれとは会社は言っていないはずです。

では、会社はあなたに何を期待しているのでしょうか?

それは、あなたが持っている「想定力」「情報収集/発信力」「提案力」を生かし、災害等のリスク事象と現場/事業への影響とを結びつけ、万が一に備えることにあると思います。

想定力:災害等のリスク事象が、現場(事業場/拠点・人材・ファシリティーなど)や事業(生産プロセス・SCMなど)にどのような影響を与えるのかを想定できる能力

情報収集/発信力:現場の人的あるいは物的な被災情報をICT等も活用し効率的(迅速かつ正確)に収集し、経営幹部や社内関連部門との情報共有を速やかに図る能力

提案力:「想定力」「情報収集/発信力」にもとづき、被災した現場や事業に対して会社として次に取るべきアクションは何かを提案し、初動対応や復旧対応の経営判断が的確に行えるように支援する能力


会社はあなたのスキルやいままで培ったキャリアに、上記のような「想定力」「情報収集/発信力」「提案力」の可能性を感じているのではないでしょうか。

これからのあなたには、災害等のリスク事象と現場/事業への影響とを結びつける能力をさらに磨き、非常時だけでなく平時も、リスク対策・BCPの分野で活躍することが期待されているのです。

あなたの能力にさらに磨きをかけるための3つのワーク

①フットワーク
できるだけ腰軽く、できるだけ多くの事業場を回って、現場を知ること。

多くの現場をまわろう(写真:写真AC)

どんな事業をどんな生産プロセスでどんな人が担当しているのか、工場は5Sが行き届いているか、この拠点は川の氾濫が心配だ、この工場は海のそばで津波のリスクが高そうだ、この拠点は建屋の耐震対策も生産設備の固定もしっかりできている等…。

数多くの事業場の現場の印象を自分の心に刻み付けておくことが、「想定力」を高めることにつながります。

②ハートワーク
リスク対策もBCPも、リスク部門担当者が1人で対応できるわけがありません。事業場で防災を担当している方、関係会社でBCPを担当している方、施設原動や生産設備や調達や物流や人事労務や経理財務や、多くの協働者が必要です。

いつも素直な心で感謝を忘れず(写真:写真AC)

協働者をさまざまな機会にリスク対策活動に巻き込み、関係性を深め、常に学ぶ心・素直な心で、感謝を忘れずに接していく心がけが大切です。その積み重ね、人との絆が、災害や事故という緊急事態時にも、迅速かつ正確な情報を収集できる「情報収集/発信力」を高めることにつながります。

③ヘッドワーク
我々が事業をしている以上、リスク対策やBCPの投資コスト対効果や前年度からの進化点を経営幹部に認めてもらう必要があります。

そのために、最新のリスク事象(例えば自然災害の多様化・頻発化、水災リスクの高まりなど)やリスク対策のトレンド(例えばオールハザードBCP、オンラインの活用など)を常に研究・ベンチマークし、自社でのリスク対策・BCPの取り組みに新たに生かすことができないかを考えていく。このような創造と企画推進のチャレンジの積み重ねが、経営幹部の信頼を高め「提案力」を高めることにつながります。

この3つのワークを意識して、リスク部門担当者としての能力をさらに磨いていってください。

誇りをもって業務にあたろう(写真:写真AC)

最後になりますが、リスク部門担当者には、従業員の生命を守る・会社の資産を保持する・お客様の事業を止めず信頼を維持する・地域社会を災害から守るといった、あらゆるステークホルダーに貢献する使命があります。ぜひ、この使命を忘れずに、リスク部門担当者としてのご成長・ご活躍を期待しております。