新型コロナウイルスも、コンピューターウイルスも、目には見えない厄介な存在であるだけでなく、組織的な対応の巧拙が、社会やビジネスにとてつもない影響を及ぼすことは、2020年を通じて身に染みたことでした。個人的に大変な思いをした人々も、想像できないくらいの歴史的な人数だったと、理解しています。

江戸時代に、武士や僧侶にだけですが、「遠慮」という外出自粛の刑罰があったそうです。ビジネスのチャレンジを支えるセキュリティーの目線からは、同じ「遠慮」でも、行動を制限するという意味の遠慮ではなく、「遠慮近憂」の遠慮を積極的に意識すべきではないかと思うことしきりです。「遠き慮(おもんぱかり)なければ必ず近き憂(うれい)有り」ということを教える論語の中の含蓄のある言葉からきた四字熟語だそうです。確かに、先回りしてセキュリティーの将来課題を考えておかないと、ビジネスのスピードに遅れるだけでなく、悪しき連中の後塵(こうじん)を拝することになってしまいがちです。

2021年も1カ月が過ぎて、新年度に向けての行動計画立案に余念ない方々も多いと思います。まずは、厄介な脅威が襲来して来そうな5つの鬼門を、Steve DurbinのForbes誌への寄稿から様子をうかがってみたいと思います。


2021年に波紋を広げる5つの脅威ベクトル

Steve Durbin, 情報セキュリティフォーラムCEO
Forbesビジネスカウンシル会員
Source: Forbes
6 Jan 2021

(写真はイメージ/Getty)

2020年は、感染症の大流行が進行するなかで、あらゆる企業がリモートワークの導入サポートに奔走した年であり、サイバー犯罪の増加はある意味不可避でした。また、データは、とどまるところを知らない爆発的な増加を続け、一方、ビジネスにおける、データ作成、共有、保存の方法は、大半が大きく変貌しました。新たに出現してきたビジネス環境を安全に維持するには、迅速なイノベーションを必要としましたが、先見の明のある企業は、インフラやポリシーを見直す好機をつかみました。

今はすすを払って、新たな一年に目を向ける時です。適切なレベルのレジリエンス(リスク耐性)を実現するために、セキュリティーと経営目標が結び付けられた、ビジネスに血を通わせるセキュリティー戦略が求められているのは明らかです。また、それがうまくいくためには、事業のあらゆる面において、今まで以上にしっかりとビジネスと歩調を合わせて関わっていく必要があります。入念な準備のために、まずは2021年に直面する主な脅威を明確に把握しておかなければなりません。