一時滞在施設での事故への補償制度に関する意見が出た

東京都は21日、「今後の帰宅困難者対策に関する検討会議」の第3回会合を開催。報告書のとりまとめへ議論を行った。首都直下地震の場合、都内で約517万人の発生が見込まれる帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設について、万が一のけがなどの際の事業者免責への取り組みとして都独自の補償制度の提案がなされ、出席者の賛同を得た。

一時滞在施設で帰宅困難者がけがを負うなどの被害を受けた場合、民法上施設管理者が責任を負うことになっている。このこともあり、7月1日現在都内918施設、そのうち民間施設は460施設にとどまっている。

報告書案では「民間施設に損害賠償責任が及ばない免責のしくみづくりに向け、引き続き検討」となっていたが、丸の内総合法律事務所・弁護士の中野明安委員が「都が主体的に取り組むべき」と意見。中野委員は「都が帰宅困難者に災害時の一斉帰宅の抑制を呼びかけている以上、帰宅困難者の自己責任とすることも適切ではない」とし、一時滞在施設内でけがを負うなどの被害があった場合に備え、条例などで都が帰宅困難者への賠償に代わる補償制度を検討すべきだと提案した。

ほかの委員も「一時滞在施設は本来、都がすべきことを民間に任せている形。都が責任を持つのは筋が通る」など賛成。報告書にどう盛り込むか今後検討が行われる方向となった。一時滞在施設の増加を図る。報告書案ではさらに既存の施設についても備蓄品購入費用補助のさらなる拡充などを行う。

また普及啓発に注力。一斉帰宅の抑制については、道路や歩道が人で埋まり、救命や救助に支障をきたす可能性もあることから、発災直後は「社会全体のために帰らない」という機運醸成を行う必要があるとした。帰宅困難者が退避先で積極的にボランティア活動を行い、「助けられる側」から「助ける側」に回るような取り組みの必要性にも触れた。

要配慮者に対しては一時滞在施設へのベビーフードや粉ミルク、ほ乳瓶の備蓄促進、バリアフリー化のほか、外国人とのコミュニケーションとしてやさしい日本語の活用を盛り込んだ。例えば「避難所」は「みんなが 逃げる ところ」といったように平易な言葉に換える。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介