危機時におけるITの力を過小評価している

もう一つ、実はこれらのBCP実効性への不安に内在する、前述の取り組みからでは見えてこない原因が存在します。

それは皮肉にも、コロナ禍で露呈した企業のITリテラシーです。日本はこの時点で、おそらく中国、韓国、北欧などに比べても、明らかに最も企業のITリテラシーが低い国の一つです。同様にDXリテラシーも低いと考えられます。

では、なぜITリテラシーやDXリテラシーが低いと、BCPの実効性に不安を与えるのでしょうか。

日本はIT後進国?(写真:写真AC)

災害時に起こるだろう状況を考えてみてください。例えば、震災によって引き起こされるオフィスの停電や断水、公共交通機関、携帯電話などのインフラ停止において、ITの力で事業継続できる部分は非常に大きいと考えられます。

震災では、県域レベルあるいは複数の県域レベルで事業所および従業員の自宅が損傷し、インフラが停止します。津波の影響が及ぶ事業所では、オフィスの復旧が長引く(半年程度)ことも考えられます。このような際、インターネットは危機対応として大きな力になり得ます。

企業の危機管理部門としては、ウイズコロナにおいて、対策本部会議の情報収集、共有・発信といった中核作業、またステークホルダーへの情報発信・広報など、従業員個々の総合的なITリテラシーが高いことによって事業復旧が効率的に進むことは火を見るよりも明らかでしょう。

さらにDXリテラシーが高い企業なら、震災発生直後から従業員の行動をGPS等により追跡し、自動的な安否確認や事故に巻き込まれている可能性をいち早く察知することもできます。より事業継続的側面としては、顧客や取引先の被害、道路の通行止め情報などをAIで予測することで、サプライチェーンの代替手段を素早く行動に移し、中核事業の停滞を極小化することもできるかもしれません。

ニューノーマルの時代に生き残れるのか、これから来る地震や台風に立ち向かえるのか、企業としてのレジリエンス能力は、リスクのとらえ方やITリテラシーに起因する内在的問題です。このことをあらためて考えていただき、課題を克服して、ステークホルダーに説明責任を果たすことが求められています。