サイバーセキュリティの統制が甘すぎる
第30回:サイバー攻撃への組織対応はBCPか?

林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
2024/08/09
企業を変えるBCP
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
違和感が二つあります。一つは、近年、ランサムウェアによるサイバー攻撃を受けた上場企業がいう「サイバーセキュリティのBCPを構築していました」という説明。サイバーセキュリティにBCP? 言葉の使い方に、いささかの違和感を覚えます。
通常、BCPの定義は専門家の間でも意見が分かれることがあります。地震などの自然災害、パンデミック感染症、テロ、戦争などの外的要因に対し、危機管理統制部門が有事の司令塔になるべくマネジメントシステムを構築する枠組みがBCPだとすると、なるほど確かに、サイバー攻撃は外的要因で、しかも地震のように突然やってくる、企業や組織にとってはまさしく「災害」です。
ただ、サイバーセキュリティの統制において、NIST (アメリカ国立標準技術研究所)の CSF(サイバーセキュリティフレームワーク)ではなく、BCP?という違和感です。
昔は、情報セキュリティは70 点くらいの対応でほぼ守れるはずと考えられていて、それでもほとんどの上場企業は予算を投じることを渋り、システムは陳腐化し、担当者のスキルも低下し、担当役員もいない、50 点くらいの対応でした。インシデントが発生するのは運だと言わんばかりに時を過ごし、機密情報を盗まれるぐらいは目をつむって、というより盗まれていることも分からないという企業がほとんどでした。
そうした状態を何年も過ごした後、犯罪者はランサムウェアという金になる木を手に入れ、ランサムウェアSaaSとしてビジネスに昇華させ、さらにAIも活用し、サーバ管理者にターゲットを絞った標的型に進化させ、担当者の買収なども含めて、手口は年々巧妙になってきています。
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