生成AIは災害対策本部の何をどう支援できるのか(イメージ:写真AC)

災害対応の課題とAIの可能性

大規模な地震が発生するたび、自治体の救援活動や企業のBCP行動が問題になります。多くの場合、社会や取引先などからよい評価を得ることができず、常に繰り返される根本的な課題を指摘され、解決できない状況が続いています。

例えば、自治体では危機管理系の人材・組織(質、量とも)に脆弱性を見てとることができ、企業においては対策本部事務局にスキルや組織をまとめる能力、特に司令塔的要素が欠けていると言われます。

現場担当者(対策本部事務局)は広範な危機管理スキルと司令塔的センスを同時に求められ、かつ、有事に際しては強靭な精神力が求められます。昔に策定した初動マニュアルがまるでなかったかのような経営陣のあいまいな指示と試行錯誤の行動で手戻りが続き、加えて外部の批判により、彼らの体力と精神状態は疲弊するばかりです。

こうした状況は、自治体にしろ、企業にしろ、BCPや危機管理の対応を怠っているためではなく、人事異動や退職などでいわゆる「わかっている人」が組織から外れ、その際にスキルの継承ができないことによります。有事に至るまでの長期、危機管理部門にスキルを持った人材をつなぎ留めておく余裕がないことがその本質的な原因ではないかと考えています。

ただ、こうした問題は何もBCPに限ったことではありません。ほとんどの製造系大企業の中核業務において同様のことが起きており、技術やスキルを継承できないため委託先に依存し、空洞化が加速している状況とまったく同じです。

小職のセミナーにおいても、異動によって初めてBCPや危機管理をやりますという方が多く参加され、自治体や公企業、民間企業とも、このような不安を抱える人たちがあとを絶ちません。特に闇が深そうなのは、自治体の災害対応です。実際のところ、報道などで取り上げられる後手後手の対応を聞くと、ある意味気の毒な思いもあります。

企業のサプライチェーンにおいても、いつやってくるのか分からない災害とBCP的状況に備えるには、やはり経営陣のリーダーシップによるガバナンスが求められることはいうまでもありません。

意志決定に必要な情報の収集・整理・分析といった前さばきの部分でAIに働いてもらう(イメージ:写真AC)

こうした状況を変革する一助になり得る可能性があるとすれば、それは人の代わりに働くAIの活用ということになります。最終的な判断は人間が行うという前提で、前さばきの部分でAIに働いてもらうことは、他社に依存せず、自社で能力を保有するという点において理に適っています。