2.BCP訓練の目的・目標・範囲の設定
訓練の目的は、情報収集で導き出された課題やニーズを解決することにありますが、大きく分ければ①BCPの実効性の確認、②策定文書の理解と定着、③緊急時における判断能力対応能力の向上、の3つ程度に大別できるでしょう。 

例えば、対策本部要員が入れ替わったばかりの組織や、BCP文書を大幅に見直したということが事前の情報収集の結果、課題となっていれば、「BCPの理解向上を図り行動ができるようにする」「見直したBCPが機能するかを確認する」ということが目的になります。 

しかし、実際には情報収集の過程で、もっと細かな課題も数多く出てくるでしょうから、それらについては目的を達成するための具体的な目標として、目的の下に落とし込んでいきます。 

例えば、「BCPの理解向上を図り行動ができるようにする」という目的の下には、安否確認を確実に行えるようにすること、初動をスムーズに行えるようにすること、監督官庁や主要取引先に被災情報を報告することなど、さまざま挙げられると思います。 

これらの項目について、訓練によってどのくらいの達成度を期待しているのか目標と達成の判断基準を定めていきます。例えば、安否確認を確実に行えるようにするという目標なら、その達成判断基準は、人事部による安否確認作業の実施、対象者全員の安否確認の実施、参集可否の確認などが判断基準となります。具体的に「30分以内」などの数値目標を定めれば、さらに定量的な評価が可能になります。対象者も、経営陣、役員、危機管理室、支社やグループ会社など多岐にわたるでしょうから、これらも整理して、今回はどこまでを対象にするかを決めていきます(図2)。対象の範囲は、対象者で決めることもできますし、事業所の拠点で決めてもいいと思います。 

ポイントは、一度にすべての目的・目標を設定して訓練を行うのではなく、何回かに分け、計画的に行うことです。例えば図2の例でしたら、すべての達成ポイントを満たす訓練をするのではなく、第1弾として緊急フェーズの①~④の目標について達成できるような訓練を設計し、後は、半年後、1年後に行うというような計画を立てます。 

また、目標を設定する際にはSpecific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Realistic(現実的)、Time(達成期限)の設定について、満たせるようにすることが大切です。頭文字をとってSMARTと覚えておくと便利です。 

ここで決まった目的・目標をもとに、訓練計画シートを作成してみます(図3)。その上で、実際に訓練の評価を行いやすくするよう、評価チェックシートを作成します。ここでの評価項目は、評価基準をどのくらい満たすことができたのかを定量的・定性的に評価するためのものです。目標に対する評価としては、何分以内に安否確認ができたか、対策本部設置後にBCPの発動を行ったかなど。一方、行動的に問題がなかったかも評価できるようにしておきます。例えば、参加者の情報伝達のスピード、タイミングに問題はないか、対策本部長の判断に矛盾がないか、などです(図4)。